唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

竜馬におまかせ!

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karasawagasepakuri@yahoo


 水道橋博士のTwitterによると吉田豪さんが唐沢俊一のインタビューをした模様。これはずっと希望していたこと(2008年11月7日の記事を参照)なので実現したとしたら凄く楽しみだ。唐沢は対談やインタビューでは情報をバンバン出してくるので(要するに文章ほど抑えがきかない)、何か新事実がわかればいいなあ。ちなみに、当ブログでも近いうちに唐沢の対談・インタビューをいくつか取り上げる予定です。


 本題。今回はパチスロ必勝ガイドNEO』3月号掲載の唐沢俊一『エンサイスロペディア』第46回「坂本龍馬を取り上げる。「幕末維新 龍馬烈伝」というパチスロにちなんだネタである。
 率直に言えば、今回のコラムはいつもと比べるとだいぶ読める内容である。毎回注意してきた「この題材がいかにパチスロと合っているか」という水増しがないだけでも良い。まあ、唐沢は実はオタクネタが苦手、ということなのかもしれないが。

 今回のコラムは「坂本龍馬」というより『竜馬がゆく』の紹介文であって、しかも、「『竜馬がゆく』は青春文学である」という一点で押し切っているので、特に目新しいことは書かれていない。

さらに言えば坂本龍馬(作中では竜馬)という人物はそれまで、日本歴史の中ではほとんど忘れられかけた人物であり、小説の中に登場することも滅多になかった。だから読者の側にも固まったイメージがなく、作者は竜馬という主人公に好きなだけ、自分の理想とする歴史を回転させたヒーロー像を付与することが出来た。そのため、司馬作品でもこの竜馬は特別に、カッコよく、目立つのである。

 『博覧強記の仕事術』に続いて『竜馬がゆく』以前に龍馬ブームが起きていたことをスルーしている(2009年9月13日の記事を参照)。司馬遼太郎作品の主人公として、個人的には『燃えよ剣』の土方歳三を推しておく。

 前半が典型的な青春時代小説で、竜馬は多彩な恋模様も経験し、剣の道の修業もする。しかし、幕末という時代の中で、次第に自分の使命に目覚めていく。この構成は凄い。読者が完全に自分もやがて日本を動かすようになる、と思い込めてしまう。

 構成だけで読者を洗脳できるものだろうか。それに個人が成長する話から社会に関わっていく話へと変化していく構成は当たり前のようによくあるのではないか。たとえば、ヤンキーものだったら一クラスの中のケンカだったのがだんだんと全国制覇まで話が膨らんでいったり(『男一匹ガキ大将』は膨らみすぎ)、スポーツものだったら部活内のレギュラー争いがやがて他校との試合に展開していったり(さらには世界一を決める争いへと発展していく)。だから、唐沢が何を「凄い」と言っているのかよくわからない。

 青年の条件とは何か。それは因習にとらわれない、合理的な精神を持つことだった。「世界を動かすのは思想ではなく、経済だ」という竜馬の考えは、幕末を超えて、戦後の日本を導いたと言っていい。政治家とか実業家のおじさん(おじいさん)が現在、何かというと坂本竜馬原文ママ)を持ち出して、自分を例えたりするのを見てオイオイといった気分になるが、彼らは青春時代、まさにリアルタイムでこの小説を読み、自分を竜馬に重ね合わせて、政財界を改革してやろうという青雲の意気込みにかられていたのである。

 「龍馬」と「竜馬」、表記が統一されていないのがキモチ悪い。しかし、確かに最近でも龍馬ファンは多い。龍馬ファンの実業家といえば孫正義だろうか。鳩山邦夫も「坂本龍馬になりたい」と言っていたけれど。
 この文章自体は別にヘンではないのだが、唐沢はコラムの締めで余計なことを書いている。

 竜馬にあこがれたおじさんたちも、時代の中でそれなりに頑張ったことと思う。ただ唯一竜馬と違っているのは、使命が終ってもなかなか天に帰ろうとしない人がほとんどだということである。

 …なんというか、新手の「追討」なんじゃないか、これは。使命が終わっても天に帰らなかったら「不幸な晩年」認定されてしまうのかもしれない。どうして唐沢俊一に人間の使命が判断できるのかわからないし、それを言うなら当の唐沢本人はまだこの世に使命が残っているのだろうか。


 ついでに書いておくと、今回のコラムでは『竜馬がゆく』の文章が引用されているのだが、コラムの欄外に

※本文中の引用は『竜馬がゆく(八)』(文春文庫)より

と、わざわざ書かれていたのには笑った。編集者も気を使っているんだなあ。

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新装版 竜馬がゆく (1) (文春文庫)

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豪さんのポッド 吉田豪のサブカル交遊録

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坂本竜馬になりたかった男―信念の人 孫正義の半生

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燃えよ剣(上) (新潮文庫)

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