Hatena::ブログ(Diary)

唐沢俊一検証blog

2011-02-21

ぱくりン子シュンイチ。

02:03

タコシェ冬コミの新刊「唐沢俊一検証本VOL.4」の通販を受け付けています。また、既刊『唐沢俊一検証本VOL.1』『唐沢俊一検証本VOL.2』『トンデモない「昭和ニッポン怪人伝」の世界』『唐沢俊一検証本VOL.3』『唐沢俊一検証本VOL.0』も通販受付中です。タコシェの店頭でも販売しています。

・初めての方は「唐沢俊一まとめwiki」「唐沢俊一P&G博覧会」をごらんになることをおすすめします。

・1970年代後半に札幌アニメ関係のサークルに入って活動されていた方、唐沢俊一に関連したイベントに興味のある方は下のメールアドレスまでご連絡をお願いします。

karasawagasepakuri@yahoo


 今日発売のパチスロ必勝ガイドNEO』4月号掲載の唐沢俊一エンサイスロペディア』第47回ではじゃりン子チエが取り上げられている。


 今でこそ大阪発信のコテコテギャグがある程度、東京でも認知・許容されているが、1970年代前半までは、大阪東京以北に住む人間にとって、かなり異文化の地であった。お笑いに関しては東西交流がさかんであったとはいえ、やすし・きよしなら許容できる東京人も、カウス・ボタンはコテコテの大阪風すぎてダメ、という壁が厳然としてあったのである。

 唐沢俊一は以前箱根以北」というワードでお笑いを語って唐沢俊一ウォッチャーの間で物議を醸したが(藤岡真さんのブログを参照)、今度は東京以北」である。神奈川のみなさんが除外されてしまった。

 

 では、なぜ関西のお笑いが東京で許容されるようになったかというと、唐沢によると1978年に連載がスタートした『じゃりン子チエ』の大阪人のメンタリティ丸出しでくり広げる(原文ママ)ナンセンスギャグ」が人気を博した影響があるという。

80年代に入って起った(原文ママ漫才ブームとこのチエ人気は合体し、81年にはやす・きよや紳助・竜介などが声をアテた劇場版アニメも制作されたが、もともと、大阪漫才が若い世代にあれほどウケたのも、『じゃりン子チエ』が地ならしをしていたためだと思う。

 …そうなのかなー。マンガで文字として大阪弁を読むのと、漫才で大阪弁を耳にするのとでは結構違うんじゃないかなー。

 あと、現在でもお笑いに関しては、関東と関西で受容のされ方が違うし、自分は「東京以南」の人間だけど、大阪の文化をさほど理解できてはいない。まあ、雑な話よね、ということだ。


 いったい、チエのどこがこんなにウケたのか。ディープ大阪出身の作者による、観光旅行的大阪風景とはまったく異なる光景描写が関西圏の読者の感性をとらえた、というだけではないだろう。1978年と言えば、円高不況などで日本が不景気にあえいでいた年である。テツや、その仲間のチンピラややくざたちのような、社会の底辺の人間は、イヤでも庶民の目につくところにいた。しかし、作者の目は、そういう人種を忌避せず、むしろ彼らの持つバイタリティを、読者たちが元気を取り戻す、その手本として描いたのである。

 「ディープ大阪って格闘技イベント?と思ったらはるき悦巳西成の出身だった。あの辺のことをそう呼ぶのだろうか。「ディープ東京」とかあるのかな。

 それにしても、毎度おなじみの「作品が人気を得た理由」を「時代状況」に無理矢理見出そうとする論法である。しかし、『じゃりン子チエ』の連載がスタートしたのは1978年だが、「関西じゃりン子チエ研究会」が作成した年表を見ると、本格的な人気が出たのは1980年のことである。どうせならそのあたりも考慮したほうがいいのでは。

 もうひとつ気になるのは、唐沢俊一がテツに対して妙に厳しい書き方をしている点である。上に引用した文章の中ではテツを「社会の底辺の人間」と呼んでいるが、コラムの中ではテツのことを他にも、

チエの父親ながら不良でどうしようもない男

無職のゴロツキ

などと呼んでいる。自分はテツは愛すべきキャラクターだと思っているから、唐沢の見方が厳しいのが気になってしまう。やはり「関西じゃりン子チエ研究会」にあるはるき悦巳のコメントからは登場人物を「忌避」するどころか愛情が感じられるんだけどなあ。


チエは、「ウチは日本一不幸な少女や」を口癖にはしているものの、決して自分の境遇を否定しない。むしろ周囲の大人たちよりずっとしっかりと現状を把握し、そこに立ち向かっていく。社会改革などというお題目より、子供にはまず、今日を生きるという切実な問題がある、ということを、70年代末に堂々と主張したのがこの作品なのである。その、大阪らしい現状肯定主義が、不景気の中にいる当時の人々を元気づけ、チエに共感を感じさせたのである。

 これは呉智英先生の得意分野だな。「庶民のしたたかさ」を称揚するインテリ(エセも含む)という。呉さんは吉本隆明の「大衆の原像」も批判してたけど。世間一般のインテリの中には、「庶民」とか「弱者」とか「少数派」に弱い人がいるけど、唐沢の「鬼畜」「裏モノ」好みも実はそれに近いのだろうか。テツへの論評を見る限り、唐沢に「庶民」への「共感」があるとも思えないが。


 さて、パチンコやオイチョカブなどのゲームもこの作品には時折顔を出す。テツがこっそり教える秘伝のようなものもあった。この機種を打とうとする人は、まず原作(かなり分量があるが)を全巻読破してからチャレンジしてみてはいかがだろうか。

 『じゃりン子チエ』はアクションコミックスで全67巻、文庫版で全47巻である。…えらく高いハードルを読者に課すものだ。

 というか、それ以前に唐沢俊一が『じゃりン子チエ』を全巻読破しているのかどうか。コラムにもネット上で拾える情報しか出ていないのだけど。


 なお、唐沢俊一は『漫画アクション』は『嗚呼!! 花の応援団』の成功を受けて「大阪漫画」の第二弾として『じゃりン子チエ』を「満を持して送り出した」としているが、他誌ではあるが水島新司あぶさん』(連載開始は1973年)もその初期は「大阪漫画」に含めていいのではないだろうか。

じゃりン子チエ  1-25巻コミックセット(双葉文庫)

じゃりン子チエ 1-25巻コミックセット(双葉文庫)

じゃりン子チエ DVD-BOX 1

じゃりン子チエ DVD-BOX 1

パチスロ必勝ガイド NEO (ネオ) 2011年 04月号 [雑誌]

パチスロ必勝ガイド NEO (ネオ) 2011年 04月号 [雑誌]

「情況への発言」全集成〈1〉1962~1975 (洋泉社MC新書)

「情況への発言」全集成〈1〉1962~1975 (洋泉社MC新書)

DEEP 2001-2010~10年目の奇跡~ [DVD]

DEEP 2001-2010~10年目の奇跡~ [DVD]

バカにつける薬 (双葉文庫)

バカにつける薬 (双葉文庫)

嗚呼!!花の応援団 1 (ホームコミックス)

嗚呼!!花の応援団 1 (ホームコミックス)

あぶさん (1) (ビッグコミックス)

あぶさん (1) (ビッグコミックス)

O.L.H.O.L.H. 2011/02/22 06:38  大阪の庶民の生活うんぬんなら、まず花登筺センセですがな。

>ディープ大阪
 キタ、ミナミではない、例えば通天閣あたりを指して言ったりしますな。冗談めかして天王寺を「ディープ・サウス」と言ったりしてました。

藤岡真藤岡真 2011/02/22 08:01  わたしが7年住んでいた上新庄(十三の近く)もディープな地でしょうねえ。東京人にとって東京以南の笑いは『ダイラケ捕り物帳』『お父さんはお人よし』『やりくり天国』『やりくりアパート』『スチャラカ社員』『てなもんや三度笠』『ヤングおー!おー!』なんかで極々身近なもんだったんですが、札幌じゃあやってなかったのかしら。

苦労苦労 2011/02/22 09:21 はじめまして。
私も仲間内で天王寺界隈を「ディープ・サウス」、岸和田周辺を「ラテン大坂」などと呼んでいたことがあります。
でもまあ、関西人がみんなそのように日常会話で使っているわけではなくて、「そういう風に言う人もたまにいる」という程度じゃないでしょうかね。

shimojoshimojo 2011/02/22 11:06 上方漫才と「じゃりン子チエ」の結びつきを語るなら、なんでテツの声をずっとやってた西川のりおが出ないんでしょうか。不思議だなあ。
あと個人的な感想ですが、やすきよよりもカウスボタンのほうがさらっとした芸風のように思います。

O.L.H.O.L.H. 2011/02/22 16:02 >子供にはまず、今日を生きるという切実な問題がある、ということを、70年代末に堂々と主張したのがこの作品なのである。

 札幌では「ケンちゃん」シリーズや「ドラえもん」は流れてなかったのか?

サーネフェルピトーサーネフェルピトー 2011/02/22 18:42 にちゃんで
「叩くのは売れないライターなんだね」
といい続ける人がいるけど、その援護しているものがどんどん売れないライターになっていくのは悲しいですね・・・

にしむらにしむら 2011/02/22 19:36 >東京以北
 なぜに南北にこだわるのかなあ
 東京都以北ならほぼ日本全国カバーしてますがな(沖ノ鳥島)

ところで、テツの教える秘伝って何だろう?

kensyouhankensyouhan 2011/02/22 21:03 コメントありがとうございます。

>O.L.H.さん
「アメリカ深南部」から来ているんでしょうね。

>藤岡さん
まあ「東京以北」ですからね。東京も札幌も一緒くた。

>苦労さん
ネット上でもわりとみかけました。

>shimojoさん
そういえば、それをスルーしてますね。

>サーネフェルピトーさん
「わりとどうでもいい!」というAAを使いたいところですね。やっている本人だけは楽しいのかな。

>にしむらさん
唐沢さんにとっては「東京=23区」なのでは。だから吉祥寺も東京じゃない。

KoichiYasuokaKoichiYasuoka 2011/02/22 23:29 「漫画アクション」の大阪ネタだと、阪神時代の『がんばれ!!タブチくん!!』(連載時は『くるくるぱぁティー』だったかも)の方が、『じゃりン子チエ』より前に連載してたような…。私の記憶違いかしら?

S.KS.K 2011/02/23 19:44 >マンガで文字として大阪弁を読むのと、漫才で大阪弁を耳にするのとでは結構違うんじゃないかなー。

 まるっきり違うのは、関西出身の上司と同僚の前でうっかり「なんちゃって
関西弁」を出してしまった時の白い目と冷たい空気で実に良く判りました。 
 全く私見かつ余談で恐縮ですが、「旧松前藩と一部漁港除く、地方の
寄り合い移民自治体北海道」は比較的共通語圏になりやすく、かつ
判りやすくて比較的早期からメディア露出も多く明るい印象の関西弁
(これだって一区切りにできないのは判っておりますが)は
「カッコいい」と思われやすく、いつぞやのパチモン模型の時の唐沢兄弟の
会話の語調が「やや関西風(本当の関西の方々ご容赦)」なのではないかと
思いました。

>>「社会の底辺の人間」
>>チエの父親ながら不良でどうしようもない男
>>無職のゴロツキ

 これ自体はまあ事実ですよね。
 ただ

>自分はテツは愛すべきキャラクターだと思っているから、唐沢の見方が厳しいのが気になってしまう。

検証班さんの仰る見解が全く尤もなので、唐沢先生には「愛」と
「語る上での最低限の敬意」、あるいは「作品知識」がないのだ
と思います。

>O.L.H.さん
>札幌では「ケンちゃん」シリーズや「ドラえもん」は流れてなかったのか?

 O.L.H.さんに言う筋違いを謝罪した上で、「札幌以北」で幼少期を
送った人間の幼児記憶を妄想にするのはご勘弁下さい、両方放映されて
おりました(当時のTV放映網事情で全道放映までされていたかは少々
怪しいですが)。

にしむらにしむら 2011/02/23 23:08 >KoichiYasuokaさん
ああ、いしいひさいちさんがいました。バイトくんとか忍者無芸帖とか
チエちゃんとたぶちくんどっちが先なんだろう。ほぼ同時期なような
唐沢どんもチエちゃん、いしいひさいち、ほかちゃんと読んでいたらなあ・・・
本当に愛情ないもんなあ

kensyouhankensyouhan 2011/02/24 03:21 コメントありがとうございます。

>安岡先生
『がんばれタブチくん』ですか、なるほど。自分は「『漫画アクション』のローカル色の強いマンガ」として『博多っ子純情』を考えてましたけど。

>S.Kさん
要するに唐沢俊一が大学時代に酒場で一緒に酒を飲んでいたような人だと思いますけどね>テツ
「社会の底辺の人間」とかバッサリ切り捨てているのが本当に気になります。

S.KS.K 2011/02/24 12:58 >要するに唐沢俊一が大学時代に酒場で一緒に酒を飲んでいたような人だと思いますけどね>テツ

「不良でどうしようもない男」「無職のゴロツキ」かはともかく
「テツ」と酒飲んでたという話には失礼ながら賛同できかねます。
 唐沢先生がウス…有難い含蓄知識を気分良く披露した反応が
「ハア?お前何言ってんの?わかる様に言えよ」と眉根に皺
よせて聞き返されたり「何オマエ飲む前に出来上がってんだよ。
勿体無いから口開くヒマに飲めよ」とゲタゲタ笑って口に酒瓶
突っ込まれたりというのは先生のチキ…繊細なお心には大変
負担なのではないかと思うのです、鼓動が通常の七分の一に
低下するくらい。
 それでテツって私が言うような対応をいかにもしそうな
オッサンだと思っていたのですが物知らずの誤解でしたで
しようか。

KoichiYasuokaKoichiYasuoka 2011/02/25 16:13 あの、『じゃりン子チエ』の話ですよね? だったら、テツはそもそも下戸なんですけど…。博打は大好きですが、酒も煙草もやらない(やれないらしい)ので。

kensyouhankensyouhan 2011/02/26 00:11 コメントありがとうございます。

>S.Kさん
『社会派くんがゆく!』では阿佐ヶ谷の飲み屋で「人生の師」と出会った話をしてましたが、真偽の程はわかりません。

>安岡先生
これは自分の話の持っていき方がよくなかったんでしょうね。
つまり、唐沢俊一は昔唐沢言うところの「社会の底辺の人間」とよく一緒に酒を飲んでいたはずなのに、どうしてテツを貶めるのか?と言いたかったんです。テツ個人の属性は問題にしていなかったのですが、説明不足でした。
でも、テツが酒もタバコもやらないというのは面白いですね。要するに「大きな子供」というわけで。