唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

カードファイト番外地。

 トランプを武器にして戦いそうなのは『めだかボックス』の蝶ヶ崎蛾々丸だが、マンガの中で最初にトランプを武器にしたのは望月三起也『秘密探偵JA』だろうか(「恐怖の暗殺団」の殺し屋・カード)。『殺人狂時代』でもそういう殺し屋が出てきたっけ。
 


 …ふだんはこーゆーどーでもいいことを考えてるんですよ、ええ。


 最近の「出版ラッシュ」自体は喜ばしいことに違いないが、それだけでいいのだろうか?という気もする。唐沢俊一の本当にやりたいことって一体なんなんだろうか?とも思う。本人が例の『クイック・ジャパン』のインタビューで「落ち着いた仕事」をしていないと認めているわけだし、竹熊健太郎さんのアドバイスとは完全に逆の方向に行っている。他のオタク・サブカル系の評論家を見てみると、多くの人はこの後も残る代表作がひとつはあるものだけど、唐沢俊一の代表作を挙げろ、と言われると唐沢マニアの自分でも正直困るし、今のところは『トリビアの泉』云々で一般人にも説明できるものの、それだってあと何年保つかわからない。まあ、出版ラッシュしながら「渾身の一作」をひそかに書き下ろしている可能性もあるし、前々から言ってるように私小説を書いてほしいものだけど。
 ただ、「出版ラッシュ」をずっと続けていくことだけを目的とする、という選択肢も有り得る。『トンデモ震災デマの世界(仮題)』のように、「サイトで発言する」→「出版社に声をかけられる」→「本を出す」というコンボを延々と続けていったりして。ちなみに、『トンデモ震災デマの世界(仮題)』について、額田久徳さんが心配されていたが、その辺はちゃんと考えているのだろうか。「トンデモ本大賞」限定で売られる『トンデモ流言飛語大賞』の収益は寄付されるようだけど。
 自分はそう遠くない時期に唐沢の検証に一区切りをつけるつもりだけど、唐沢が新作を出すのであればその都度検証はしておこうかと思っている。ただ、今までのようなやり方はとらずに、問題点を列挙した表をどこかに貼っておくという「95ヶ条の論題」もしくは「二条河原の落書」ライクなやり方をとろうかと考えている(もちろんこのブログでも記事にする)。

「この頃都に流行るもの 追討盗用ニセ知識」

という感じ。完全にやめちゃうのはいささか無責任な気もするしね。


 本題。今回で唐沢俊一鶴岡法斎『ブンカザツロン』エンターブレイン)第2章の紹介は終わりである。「負のカード集めると」(P.99〜P.104)。

P.99より。

唐沢 でもね、ほんとになんていうのかなぁ、インターネット環境はじめ、オーディオ、ビジュアルなどのソフトの充実、これは最近すごいですよ。われわれがもう、滅多にやらない上映会を追いかけて『ぴあ』に赤丸つけながら名画座渡り歩いて、それでもないものなんかはフィルムを外国から借りてとかっていうことやってたのよりも、かなりの能率でもって、今の人たちって知識を集積できると思うのね。だから、それをうまくやりゃあ、絶対にそこらへんのところで、われわれに恐れをなすようなことはないと思うんだけども、でも、そうなるとやっぱりリアルタイムで行なっているってことをどうしても今度はこっちの方が防御本能で言うじゃないですか。小林信彦が昔、『世界の喜劇人』を中原弓彦名義で書いた時に、「早いとこフィルムライブラリーというものを充実させろと。アメリカじゃあ二〇代の人間がマルクス兄弟の論文を書くんだと、日本もこういう状況を作らなきゃいけない」とか言って。で、ビデオが出たとたんに、「ああいうものは、リアルタイムで観てないと意味がない」と(笑)。あれに、われわれの世代は地団駄を踏んだものだけど。

 小林信彦について、唐沢は岡田斗司夫『オタクの迷い道』(文春文庫)巻末の対談でも同様の発言をしていたが、これは別に手のひら返しでもないんじゃないかなあ。アーカイブが整備されてきてもそこからこぼれ落ちてしまうものはあるわけで(そもそも小林の発言が正確なのかどうか)。当時を知る人の意見はやはり貴重である。…しかし、唐沢は「防御本能」で自分の経験を話していたのか。この人は「オタク第一世代」の中でも実体験に乏しい方だから、あまり有効なやりかたでもないような気はするが。


 P.101より。

鶴岡 ですよね。だって、そうそう、唐沢さんとかオタク第一世代っていう割りには、前には小林信彦がいるんですよね。


唐沢 森卓也とか石上三登志とかね。彼らの場合は自分を奇人変人と定義して、奇人変人がいてもいい業界の方にいったじゃないですか。オタクでもわれわれはどっちかっていうと、彼らに近い世界にいるけども、一般の普通の会社にいながらオタクでいられるというのが現代のすごいところで。

 鶴岡氏が無意識のうちに「オタク第一世代」という概念の薄弱さに切り込んでいるのはおいといて、唐沢が妙なことを言っている。森卓也市役所で20年以上勤務していたのだが、市役所って「奇人変人がいてもいい業界」なのか? 「ガンダム論争」での唐沢の日本の特撮批判は森卓也の影響を強く受けたもののようだが(『唐沢俊一検証本Vol.0』を参照)、森について案外詳しくないようだ。


 この後、唐沢は「オタク」という悪いイメージのある言葉をあえて選んだことに意味があると説いている。P.102〜P.103より。

唐沢 ただオタクということをやったのは、良い面と悪い面とがいろいろあったと。良い面というのは、かつて差別用語であったものをあえて、己たちの名前に冠することによって、自分の名前に冠することによって、自分たちは、自分たちのアイデンティティを大事にするぞっていうことをね、あえてアピールするっていう戦略はアリだと思うんです。

芦原醜男(原文ママ)じゃないけれど、負のイメージを持った名称を転化させることって伝統あるやり方なんだけどね。

社会を軽蔑して、むしろ一般社会より自分たちの方が上だって思ってるんだから、その社会が自分たちに投げかけた軽蔑の言葉っていうのは、そっくりそのままね、自分たちが誇りに思うものになるっていう考え方。

 岡田斗司夫にはそのような戦略があったのだろうか。ただ、この「社会から差別されている」という感情が「オタク=エリート」という発想の根底にあると考えるとなかなか興味深い。被差別感情が逆転してエリート意識に変化することは珍しくないわけで。あと、葦原醜男の「醜」は「強い」の意味なのでは。


 P.104より。

唐沢 (前略)私はもうちょっと、この第一世代と第二世代の断絶を深めたほうがいいんじゃないかというふうに思うと。そして第一世代オタクは第二世代オタクに、まぁ媚びてるところもあるのよ。それはオタクとして尊敬されたいがために。ずうっと未だにね。あの新作のアニメとか追っかけてるの。それはそれで自分好きなこと(原文ママ)なんだけど、好きでもないのに今の新作アニメを見てるの、そういうのやめようよっていうね。

 唐沢が媚びているのはオタク第二世代に限らない。この人は「他人に評価されたい」という気持ちがとにかく強く(これは岡田斗司夫も同様)、「今のオタク事情にも通じてますよ」とマスコミでアサッテなことをコメントしてしまうのも、数々のP&Gをやらかした理由も実はそこにあるような気がするし、残念ながらそういう人はプロデュースにも向いていないと思う。唐沢にしろ岡田にしろ、社会的には十分認められている人だろうに、どうしてそんなに褒められたいのかなあ、と時々不思議に感じる。もしかすると自分の中の評価と外部からの評価が釣り合っていないのかもしれない。「他人に評価されたい」と感じるのはごく自然なことだが、評価を求めようとするあまり他人をないがしろにして身の丈に合わないことをやり始めると大変なことになるのかも、となんとなく思った。…しかし、2001年の段階で「新作アニメ」が「好きでもない」のか。そんな人が『社会派くんがゆく!』で『エンドレスエイト』や『けいおん!』の話をするのはさぞかしつらかったろうな(『唐沢俊一検証本VOL.3』を参照)。もう無理をしなくてもいいですよ。


 次回から第3章に入ります。



タコシェ冬コミの新刊「唐沢俊一検証本VOL.4」の通販を受け付けています。また、既刊『唐沢俊一検証本VOL.1』『唐沢俊一検証本VOL.2』『トンデモない「昭和ニッポン怪人伝」の世界』『唐沢俊一検証本VOL.3』『唐沢俊一検証本VOL.0』も通販受付中です。タコシェの店頭でも販売しています。
・初めての方は「唐沢俊一まとめwiki」「唐沢俊一P&G博覧会」をごらんになることをおすすめします。
・1970年代後半に札幌でアニメ関係のサークルに入って活動されていた方、唐沢俊一に関連したイベントに興味のある方は下のメールアドレスまでご連絡をお願いします。
karasawagasepakuri@yahoo.co.jp


カードファイト!! ヴァンガード ブースターパック 第1弾 騎士王降臨 BOX

カードファイト!! ヴァンガード ブースターパック 第1弾 騎士王降臨 BOX

めだかボックス 1 (ジャンプコミックス)

めだかボックス 1 (ジャンプコミックス)

秘密探偵JA 1 (ぶんか社コミック文庫)

秘密探偵JA 1 (ぶんか社コミック文庫)

殺人狂時代 [DVD]

殺人狂時代 [DVD]

ブンカザツロン (ファミ通Books)

ブンカザツロン (ファミ通Books)

オタクの迷い道 (文春文庫)

オタクの迷い道 (文春文庫)

世界の喜劇人 (新潮文庫)

世界の喜劇人 (新潮文庫)

定本アニメーションのギャグ世界

定本アニメーションのギャグ世界

涼宮ハルヒの憂鬱5.142857 (第2巻) 限定版 [DVD]

涼宮ハルヒの憂鬱5.142857 (第2巻) 限定版 [DVD]