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唐沢俊一検証blog

2011-06-07

カードファイト番外地。

08:46

 トランプを武器にして戦いそうなのは『めだかボックス』の蝶ヶ崎蛾々丸だが、マンガの中で最初にトランプを武器にしたのは望月三起也『秘密探偵JA』だろうか(「恐怖の暗殺団」の殺し屋・カード)。『殺人狂時代』でもそういう殺し屋が出てきたっけ。

 


 …ふだんはこーゆーどーでもいいことを考えてるんですよ、ええ。


 最近の「出版ラッシュ」自体は喜ばしいことに違いないが、それだけでいいのだろうか?という気もする。唐沢俊一の本当にやりたいことって一体なんなんだろうか?とも思う。本人が例の『クイック・ジャパン』のインタビューで「落ち着いた仕事」をしていないと認めているわけだし、竹熊健太郎さんのアドバイスとは完全に逆の方向に行っている。他のオタクサブカル系の評論家を見てみると、多くの人はこの後も残る代表作がひとつはあるものだけど、唐沢俊一の代表作を挙げろ、と言われると唐沢マニアの自分でも正直困るし、今のところは『トリビアの泉』云々で一般人にも説明できるものの、それだってあと何年保つかわからない。まあ、出版ラッシュしながら「渾身の一作」をひそかに書き下ろしている可能性もあるし、前々から言ってるように私小説を書いてほしいものだけど。

 ただ、「出版ラッシュ」をずっと続けていくことだけを目的とする、という選択肢も有り得る。『トンデモ震災デマの世界(仮題)』のように、「サイトで発言する」→「出版社に声をかけられる」→「本を出す」というコンボを延々と続けていったりして。ちなみに、『トンデモ震災デマの世界(仮題)』について、額田久徳さんが心配されていたが、その辺はちゃんと考えているのだろうか。「トンデモ本大賞」限定で売られる『トンデモ流言飛語大賞』の収益は寄付されるようだけど。

 自分はそう遠くない時期に唐沢の検証に一区切りをつけるつもりだけど、唐沢が新作を出すのであればその都度検証はしておこうかと思っている。ただ、今までのようなやり方はとらずに、問題点を列挙した表をどこかに貼っておくという「95ヶ条の論題」もしくは「二条河原の落書」ライクなやり方をとろうかと考えている(もちろんこのブログでも記事にする)。

「この頃都に流行るもの 追討盗用ニセ知識」

という感じ。完全にやめちゃうのはいささか無責任な気もするしね。


 本題。今回で唐沢俊一鶴岡法斎『ブンカザツロン』エンターブレイン)第2章の紹介は終わりである。「負のカード集めると」(P.99〜P.104)。

P.99より。

唐沢 でもね、ほんとになんていうのかなぁ、インターネット環境はじめ、オーディオ、ビジュアルなどのソフトの充実、これは最近すごいですよ。われわれがもう、滅多にやらない上映会を追いかけて『ぴあ』に赤丸つけながら名画座渡り歩いて、それでもないものなんかはフィルムを外国から借りてとかっていうことやってたのよりも、かなりの能率でもって、今の人たちって知識を集積できると思うのね。だから、それをうまくやりゃあ、絶対にそこらへんのところで、われわれに恐れをなすようなことはないと思うんだけども、でも、そうなるとやっぱりリアルタイムで行なっているってことをどうしても今度はこっちの方が防御本能で言うじゃないですか。小林信彦が昔、『世界の喜劇人』を中原弓彦名義で書いた時に、「早いとこフィルムライブラリーというものを充実させろと。アメリカじゃあ二〇代の人間がマルクス兄弟論文を書くんだと、日本もこういう状況を作らなきゃいけない」とか言って。で、ビデオが出たとたんに、「ああいうものは、リアルタイムで観てないと意味がない」と(笑)。あれに、われわれの世代は地団駄を踏んだものだけど。

 小林信彦について、唐沢は岡田斗司夫オタクの迷い道』(文春文庫)巻末の対談でも同様の発言をしていたが、これは別に手のひら返しでもないんじゃないかなあ。アーカイブが整備されてきてもそこからこぼれ落ちてしまうものはあるわけで(そもそも小林の発言が正確なのかどうか)。当時を知る人の意見はやはり貴重である。…しかし、唐沢は「防御本能」で自分の経験を話していたのか。この人は「オタク第一世代」の中でも実体験に乏しい方だから、あまり有効なやりかたでもないような気はするが。


 P.101より。

鶴岡 ですよね。だって、そうそう、唐沢さんとかオタク第一世代っていう割りには、前には小林信彦がいるんですよね。


唐沢 森卓也とか石上三登志とかね。彼らの場合は自分を奇人変人と定義して、奇人変人がいてもいい業界の方にいったじゃないですか。オタクでもわれわれはどっちかっていうと、彼らに近い世界にいるけども、一般の普通の会社にいながらオタクでいられるというのが現代のすごいところで。

 鶴岡氏が無意識のうちに「オタク第一世代」という概念の薄弱さに切り込んでいるのはおいといて、唐沢が妙なことを言っている。森卓也市役所で20年以上勤務していたのだが、市役所って「奇人変人がいてもいい業界」なのか? 「ガンダム論争」での唐沢の日本の特撮批判は森卓也の影響を強く受けたもののようだが(『唐沢俊一検証本Vol.0』を参照)、森について案外詳しくないようだ。


 この後、唐沢は「オタク」という悪いイメージのある言葉をあえて選んだことに意味があると説いている。P.102〜P.103より。

唐沢 ただオタクということをやったのは、良い面と悪い面とがいろいろあったと。良い面というのは、かつて差別用語であったものをあえて、己たちの名前に冠することによって、自分の名前に冠することによって、自分たちは、自分たちのアイデンティティを大事にするぞっていうことをね、あえてアピールするっていう戦略はアリだと思うんです。

芦原醜男(原文ママ)じゃないけれど、負のイメージを持った名称を転化させることって伝統あるやり方なんだけどね。

社会を軽蔑して、むしろ一般社会より自分たちの方が上だって思ってるんだから、その社会が自分たちに投げかけた軽蔑の言葉っていうのは、そっくりそのままね、自分たちが誇りに思うものになるっていう考え方。

 岡田斗司夫にはそのような戦略があったのだろうか。ただ、この「社会から差別されている」という感情が「オタク=エリート」という発想の根底にあると考えるとなかなか興味深い。被差別感情が逆転してエリート意識に変化することは珍しくないわけで。あと、葦原醜男の「醜」は「強い」の意味なのでは。


 P.104より。

唐沢 (前略)私はもうちょっと、この第一世代と第二世代の断絶を深めたほうがいいんじゃないかというふうに思うと。そして第一世代オタクは第二世代オタクに、まぁ媚びてるところもあるのよ。それはオタクとして尊敬されたいがために。ずうっと未だにね。あの新作のアニメとか追っかけてるの。それはそれで自分好きなこと(原文ママ)なんだけど、好きでもないのに今の新作アニメを見てるの、そういうのやめようよっていうね。

 唐沢が媚びているのはオタク第二世代に限らない。この人は「他人に評価されたい」という気持ちがとにかく強く(これは岡田斗司夫も同様)、「今のオタク事情にも通じてますよ」とマスコミでアサッテなことをコメントしてしまうのも、数々のP&Gをやらかした理由も実はそこにあるような気がするし、残念ながらそういう人はプロデュースにも向いていないと思う。唐沢にしろ岡田にしろ、社会的には十分認められている人だろうに、どうしてそんなに褒められたいのかなあ、と時々不思議に感じる。もしかすると自分の中の評価と外部からの評価が釣り合っていないのかもしれない。「他人に評価されたい」と感じるのはごく自然なことだが、評価を求めようとするあまり他人をないがしろにして身の丈に合わないことをやり始めると大変なことになるのかも、となんとなく思った。…しかし、2001年の段階で「新作アニメ」が「好きでもない」のか。そんな人が『社会派くんがゆく!』で『エンドレスエイト』や『けいおん!』の話をするのはさぞかしつらかったろうな(『唐沢俊一検証本VOL.3』を参照)。もう無理をしなくてもいいですよ。


 次回から第3章に入ります。



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加藤加藤 2011/06/07 11:51 あれ?スカイヤーズ5は、トランプを使ってなかったっけって、wikipedia をあわてて見てきました。
カードものといえば、これも入れてください。

NNTNNT 2011/06/07 18:42 ネタとして微妙ですが、X−MENのガンビットもトランプを武器にしたりしてました。

yonocoyonoco 2011/06/08 02:21 トリビアが代表作?になるんでしょうかね(--;)


アニメに限らず媚び云々というより、単に好きなら観るくらいの感じだと思うんですけどね、普通は
好きじゃなければ観なきゃいいだけの話ですな

S.KS.K 2011/06/08 06:34 そこまで古くはないですが「仮面ライダーストロンガー」の
敵幹部ジェネラルシャドウの武器の一つがトランプです
(サーベルも良く使う)。
俗説ですが「とにかく賞賛を欲しがる人というのは、
確固たる自信や自我のない人に多い。『他人に認め
られる事で彼らのアイデンティティは漸く確立する」
という物がありまして……どのツラ下げてエヴァ
嫌ってたんでしょうね先生方。

藤岡真藤岡真 2011/06/08 07:41 >森卓也とか石上三登志とかね。彼らの場合は自分を奇人変人と定義して、奇人変人がいてもいい業界の方にいったじゃないですか。

 森さんは市役所に勤めていたのだし、石上さんは電通のサラリーマン。小林信彦だって編集者ですから、唐沢よりはるかにまっとうな職に就いていたオタクですね。唐沢って「一般の普通の会社」にいたんだろうか。

discussaodiscussao 2011/06/08 07:59 >そもそも小林の発言が正確なのかどうか

うろ覚えだけれどたしか或る若い映画批評家を褒めたときに、ディレッタントによくある妙に古い名作やカルト作ばかり語るといった背伸びがなく、リアルタイムにみた作品で自分の映画経験を語っていたことを評価していたことがありました。「(古典やカルト作を)リアルタイムで観てないと意味がない」というのはこれを曲解したものでしょう。

阿ーん阿ーん 2011/06/08 08:44  武器じゃないけど「ジャッカー電撃隊」はトランプモチーフの戦隊物でしたね。
 唐沢氏の文章には「アイデンティティ」とか、よく横文字が用いられるんですが(しかも、間違った用法も結構ある気がする)ゴマカシの文章でしかないと思います。
 彼のアイデンティティが、あやふやなのに、勝手に他人のを決めつけないで欲しいです。

桃李庵主人桃李庵主人 2011/06/08 09:30 何かが嫌いなら嫌いでも別によいのですけど、それなら例えば、
「これを嫌う《俺》、しかもスルーできず気にする《俺》は何なのか?なぜ嫌いなんだ?じゃ、どうだったら好きになれたのか?」
を掘り下げてみる行き方だってあったのに、「こんなの好きな《お前ら》って馬鹿じゃね?」
と他者を揶揄してばかりいて、無駄に敵は作るわ作品を(そして自己の価値観を、アイデンティティを)
掘り下げるのには成功しないわ…なんかすごく残念な結果ですよね、これ。

kensyouhankensyouhan 2011/06/08 12:12 コメントありがとうございます。

>加藤さん
「恐怖の暗殺団」が1965年発表で、『スカイヤーズ』の連載開始が66年なので、『JA』の方が若干早いですね。
ただ、時期的に接近しているので両者のモトネタになった作品があったのかもしれません。

>NNTさん
ガンビットは鉄板ですが、意外と新しいキャラクターだったのでビックリ。

>yonocoさん
『トリビアの泉』では唐沢の本は叩き台にされただけですから、あれを「作品」とは言えないでしょう。

>S.Kさん
自信がないんでしょうね。

>藤岡さん
札幌の医療事務の会社でボディビルに励んでいた、というのが本人の話。

>discussaoさん
小林信彦の本は実家に置きっぱなしなので自分もうろ覚えですが、まず「フィルムライブラリーの充実」は確かに言ってました。パリでマルクス兄弟の未公開作品を観たんだったっけ。
で、「当時の空気を知らないといけない」というのも言ってました。「小津安二郎がハワード・ホークスを褒めていたことを知らない人がいる」とか、それこそ森卓也との対談で言ってたんじゃないかと。
ただ、この2つの発言は別に矛盾しないと思うので、唐沢がどうしてひっかかったのかはよくわかりません。

>阿ーんさん
自分のアイデンティティがしっかりしてないから他人のアイデンティティを攻撃するのでしょう。

>桃李庵主人さん
「ガンダム論争」から見てみると当然の結末なのかもしれません。『ヤマト』の時点からそうなのかな。

SawaharaSawahara 2011/06/08 16:14 『盗作人物笑史 爆笑唐沢俊一』とかコーエーから出たら面白かろのぉ、とかいうのが私の考えるどーでもいいこと。

しかし相変わらず「われわれ」「われわれ」うるさいな、こいつ。

>われわれに恐れをなすようなことはないと思うんだけども…今度はこっちの方が防御本能で言うじゃないですか
地を這う毛虫の如き賤しき私めでも、「オタク第一世代」はいざしらず、さすがに唐沢なんぞに恐れをなすことはございません。
てか、「防御本能」って、恐れをなしてんのはどっちだ。

>「他人に評価されたい」
唐沢の場合、頭に「楽して」とつけたほうがいいかも。

>唐沢にしろ岡田にしろ、社会的には十分認められている人だろうに
この社会的認知だって、そもそも「唐沢なをきの兄」であることで「楽して」得たものだし。

栃尾ジョー栃尾ジョー 2011/06/08 18:40 >kensyouhanさん
>ただ、この「社会から差別されている」という感情が「オタク=エリート」という発想の根底にあると考えるとなかなか興味深い。
>被差別感情が逆転してエリート意識に変化することは珍しくないわけで。

長山靖生氏が著書「偽史冒険世界」で検証していた「竹内文書」「日ユ同祖論」「貴種流離譚」「ジンギスカン鍋の考案者=源義経説」なども、
「被差別感情が逆転してエリート意識に変化すること」の好例でしたね。
長山氏が自分のエッセイでやたらと岡田の行動を詳しく検証するのはその辺に理由があると感じるのは勘繰り過ぎと自分でも思いますが。


長山靖生氏が「偽史冒険世界」で取り上げた「貴種流離譚」「竹内文書」「にちゆ

栃尾ジョー栃尾ジョー 2011/06/08 18:43 なんか失敗した
日垣隆なら改竄してくれるのに

kensyouhankensyouhan 2011/06/10 11:54 コメントありがとうございます。

>Sawaharaさん
光栄から出るんだったら唐沢なをきがイラストを描きそう。

>栃尾ジョー さん
オタクを研究するのであれば岡田斗司夫は避けて通れません。唐沢俊一はスルーしてもかまいませんが。

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