唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

プチクリ三年柿八年。

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 2006年3月に発行された『月刊岡田斗司夫』創刊号唐沢俊一のインタビュー「すべての人はプチクリになる」が掲載されているのを見つけた。…まだ未発掘の資料があったんだなあ。ちなみに、『月刊岡田斗司夫』というのは岡田が主宰するサークル「ロケット野郎」が発行していた同人誌で、3号まで出ていたようだ。



 …で、「すべての人はプチクリになる」とあるのだが、そもそも「プチクリ」なるものが一体何なのかわからない。仕方がないので、2005年12月に発行された岡田の単行本プチクリ! 好き=才能!』幻冬舎)を読んでみたのだが、これがなかなか興味深い内容だったので、まずは岡田の本について紹介してみることにしたい。



 「プチクリ」について、岡田は『プチクリ! 好き=才能!』P.14で「プロじゃないけど、楽しんで、自分から自由にクリエイティブしている人」と定義している。「クリエイトしている人」でないのが謎だが、まあいいや。細かいところが気になるのは俺と右京さんの悪い癖だ。
 それに続けて、日々苛酷な仕事に追われるプロのクリエイターよりも「プチクリ」の方が楽しく自由に創作活動に励める、とそのメリットを説いているのだが、「好きなものを本業にしてしまうとつらい」というのはよく聞く話なので特に目新しさは感じられないし、「つらくてもプロになりたい」という人は決していなくならないだろう。人間はどうしても「やりがい」を求めてしまうのだし。


 そういう風に疑問に感じていたのだが、岡田が「プチクリ」の代表例として唐沢俊一の名前を挙げていたので余計にわからなくなってしまった。同書P.201〜202より。

 たとえば作家の唐沢俊一さん。『世界一受けたい授業』で人気が爆発した彼は、長年の友人です。『トリビアの泉』のスーパーバイザーも務め、雑学の大家として不動の名声を築きました。著書も多く、知らない人が見たらあきらかに雑学の研究家です。
 でもこの人、実は薬局の息子で、ちゃんと大学の薬学部にも行ってました。
 同時に、古書コレクターで、古書の世界では知らない人がいないほどの名物男。
 しかしタレントと芸人を育てるのも大好きで、芸能事務所の社長までしていました。
 いや、それだけではありません。映画の監督もしていますし、ご自身も小劇場の舞台に立つ役者さんです。マンガの原作も書いていますし、小説も書いています。今や、TVにレギュラー出演する文化人タレントです。
 何が本業かわからない。
 これがプチクリの特徴なのです。
 こんなに多方面に才能があって、忙しさは日本でもトップクラスなのにこの唐沢さん、自分の好きな仕事しかしません。ノーギャラや持ち出しの仕事でも、好きなことなら喜んでやってしまいます。
 別に成功した今、経済的余裕があるからじゃないんです。
 昔、まだ貧乏だった頃から一貫してこの人、好きな仕事ばかりしています。


 いやー、褒めること褒めること。岡田が記している唐沢の経歴にはツッコミどころがいくつかあるがスルーしておこう。
 岡田は唐沢以外にも、いしかわじゅんみうらじゅん山田五郎伊集院光も「プチクリ」だと言うのだが…、えーと、彼らは世間一般では「マルチタレント」と呼ばれているのではないかと。「プチクリ」なる造語を用いるまでもない。だいたい彼らはそれぞれの仕事をプロとしてこなしているではないか。



 ただ、この件に関して、唐沢俊一の胸中は複雑だったようである。『月刊岡田斗司夫』創刊号P.5より。

 ぼくのことを、岡田さんは本の中でプチクリの代表者みたいな形だと言ってくれたけれども、ぼくは子どもの時から自分がプチクリであるということにすごくコンプレックスを持っていた。

 唐沢は「プチクリ」を「器用貧乏」という意味で使っているようなのだが、それだけでなく「何が本業かわからない」という点も実はあまり衝かれたくないポイントだったのではないか、と思われてならない。かつて、ニコ生で語っていたときもこれまでの自分の仕事ぶりにあまり納得がいってなかったようだから(2012年4月7日の記事を参照)。



 そして、「何が本業かわからない」つらさは岡田もまた同じなのではないか、と思われてしまう。『プチクリ!』P.183〜184より。

 こんなに転々としないで、一つの事に集中してがんばれば、どれかの分野でもっと一流になれたのでは? と思う人もいるかもしれません。
 でも、私にはそんなふうには思えません。



 たとえばあの頃、アニメ会社ガイナックスで社長業に専念して、アニメばかり作っていたら、どうだったでしょうか?
 私が辞めて数年後には、ガイナックスは「新世紀エヴァンゲリオン」というアニメで超ヒットを飛ばしました。でも、超ヒットを飛ばしたら好きなものが作れる、というわけではないようです。
 今、その会社は大ヒット作を生み出したおかげで、経済的には大いに潤っている、と聞きます。街を歩いたらどのパチンコ屋にも、超ヒット作「エヴァンゲリオン」のキャラが使われています。
 でも、そこには私の幸せはないような気がするんです。

 大学の先生も、文化人タレントも、プロデューサーも、アニメ会社社長も、それだけしかできないんだったら、それぞれ窮屈な仕事です。全部やってきた私は、それを知っています。
 窮屈で自由がなく、「やりたいことだけ」を素直に目指せない。
 それがプロの世界なんです。

 このくだりを一読して、「うわー…」となってしまった。だって、これって『まんが極道』の「ならなくてよかったくん」みたいなんだもの。岡田さんの心中を察するととてもいたたまれなくなる。
 というか、これは妙な話で、『エヴァ』がヒットしたおかげで窮屈になったとしても、それ以上にガイナックス庵野秀明をはじめとしたスタッフにとっては新たな創作に挑戦できる可能性は明らかに広がったわけだから、ヒットした事実をマイナスに捉えるべきではないのではないだろうか。…なんだか、唐沢俊一青年の「『ゴジラ』が成功したのが良くなかった」理論みたい(2008年11月20日の記事を参照)。倒錯した発想に陥りやすい人、というのも世の中にはいるのだろうか。それに、岡田だってガイナックスで仕事をしていた時は窮屈さと戦いながら創作活動をしていたのではないか? とも思う。『オネアミスの翼』の「フィルムを切るなら腕を切れ」事件(「岡田斗司夫なう」)は、「プチクリ」らしい振舞いなのだろうか。





 ここまで見てきたように、『プチクリ! 好き=才能!』で書かれている、「プチクリ」はプロのクリエイターよりも優位である、という理論にはいろいろな隙があるのだが、実は唐沢俊一もそれを指摘している。『月刊岡田斗司夫』創刊号P.5より。

(前略)本当に岡田さんの言うプチクリの人たちが自分の才能とかやりたいこと、好きなことっていうのを、自分が好きだからやるっていう範囲にとどめておいて、食い扶持を稼ぐのは仕事でという形ぐらいに使えてればいいんだけれども、いろいろなことができる人はなかなかそうはいかない。
 だいたい、自分に好きなものがある人間にとってひとつの夢っていうのは、それで食っていくプロになりたい、プチでなくメジャーな、有名なクリエイターになりたいってのがある。そのためには、自分の中のプチクリ的なところをツブしていかないと、というのが二律背反なのね。プチクリという考え方については、そこらへんをどうクリアするのかなってのが一番ひっかかったところなんですよ。


※ 上記の引用部分を修正しました。


 結局、「創作活動を仕事にしたい」「創作活動で多くの人に評価されたい」という人にとって、「プチクリ」というのはあまり救いになる考え方ではないのだろう。「創作活動だけできればいい」という人は岡田に言われるまでもなく勝手にやっているわけだし。『プチクリ! 好き=才能!』に編集協力として参加し、唐沢のインタビューでは聞き手をしている大内明日香女史も、

(前略)相変わらずプチクリが売れてないのですが、売るためになにかご提案いただけることはないでしょうか。

と唐沢に聞いているので(『月刊岡田斗司夫』P.11)、一般読者のウケもそんなに良くなかったのではないか。こーゆー本はウソでもいいから「あなたも№1になれる!」くらいの勢いが必要なのかもしれない。2位じゃダメなんだね、きっと。



 大内女史の名前が出てきたが、そのせいなのか『プチクリ! 好き=才能!』はやはり大内女史が編集を担当した唐沢俊一の単行本『博覧強記の仕事術』(アスペクト)によく似ている。具体的に言えば、妙に押し付けがましい文体や読者のレベルをかなり低めに設定しているところがよく似ている。まあ、この手の本にはよく見られるスタイルなのかもしれないが…。あと、『プチクリ!』P.148〜149には「心の師匠を決めよう!」とあるが、これは『すべてのオタクは小説家になれる!』(イーグルパブリシング)の「脳内弟子のモトネタだろう(2009年3月11日の記事を参照)。
 また、『プチクリ!』には自らの才能を見つけるために好きなものを書き出す「才能埋蔵マップ」の作成を勧めるくだりがあるが、これなどは後のレコーディング・ダイエットと関連があるような気がする。そういえば、『プチクリ』P.133には以下のようにある。

 世にあふれるダイエット本を見てください。
 肝心の「ダイエットの方法」なんて、ほんの数ページです。
 200ページ以上ある本のほとんどが「大丈夫、できる!」「こうやってヤル気を維持しよう」というモチベーションコントロールに使われています。(以下略)

 他にも気になるところがあるが、とりあえずこの辺にしておく。「自分には関係のなさそうな本だ」と今までスルーしてきたけど、いざチェックしてみたらなかなか興味深かったのでトクした気分。
 当ブログの検証対象はもちろん唐沢俊一なのだが、その関連で岡田斗司夫についても調べると、唐沢より岡田の方が奇妙なことを言っているケースがしばしばあって、今回もそのような事例の一つである。おかげでこんなに長々と書いてしまったので、唐沢のインタビューは次回紹介したい。




 おまけ。
 『月刊岡田斗司夫』創刊号には岡田によるトークイベントの模様が収録されているのだが、その中にこんな発言があった。同書P.22より。

(前略)「アカギ」は和室麻雀編に入ってからが、なにか心のひっかかりがとれてしまって、録画はしているけれど観てない。(後略)


 『アカギ』にそんな話あったっけ? と一瞬思ったが、これ、正しくは鷲巣麻雀ですね。単純な誤表記だけど、妙になごやかなイメージがあって好きだなあ。
 




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