知って得する「風防」知識

こんにちはナオキです。

時計の業界に入りようやく1年、ちょっと時計屋っぽく、時計の技術的知識なども
これからお届けできればなと思います。


初回は風防のお話です。

時計の表面や裏を覆い、ホコリや水などの汚れや異物から文字盤やムーブメントを保護してクリアに見せているのが風防ガラスです。
その風防ガラスの素材は大きく分けて3種類あり、代表的なのが、有機ガラス、無機ガラス、サファイアガラスの3つになります!


先ず、有機ガラスとは、
一般的にアクリルガラスと呼ばれ、プラスチックや合成樹脂で出来ています。
加工性に優れ、他のガラスより軽量で薄く作っても割れにくく、ケースと溶着させると簡単に防水性を保てる良い面がありますが、
その反面、樹脂なので傷つきやすく、紫外線で変色することもあります。
(オメガ・スピードマスターなどがそうです。)


次に、無機ガラスとは、
ミネラルガラスと呼ばれる一般的なガラスです。
その起源は意外と古く、紀元前3000年〜2000年の古代エジプトもしくはメソポタミアと言われています。
ある船乗りが砂浜でたき火をしていて、潮風を遮る為にそばにあった岩塩を風除けにしていた際、
たき火の熱で岩塩が溶けて、砂と反応を起こしてガラスになったと言われています。(奇跡ですね。。)
成分はケイ酸、ホウ酸、炭酸ナトリウム(ソーダ灰)、炭酸カルシウム(石灰)などを溶かして非結晶状態で固めたものです。
これを風冷処理や化学処理を行い、強度を高めたものを一般的に強化ガラスといいます。
セイコーなどはハードレックスという、通常の無機ガラスより数倍、傷つきにくくしているガラスを使用していますね)


最後にサファイアガラスとは、
厳密に言うとガラス成分ではなく、人工サファイアの粉末を水素バーナーで2000℃まで熱して溶かし、結晶化したものを言います。
溶かした人工サファイアを1滴ずつ垂らして金型に溜め込み、約12〜13センチの結晶化させたブールという長細い棒つくり、
そのブールをウォーターカッターや、研磨剤を流した金属カッターでスライスしていき、研磨して磨き上げた物をサファイアガラスと言います。
(このブールを作る作業はとても時間が掛かり、約48時間も掛かってしまいます。)
その硬度、屈折率は天然サファイアと同じで硬くて傷付きにくく、経年劣化もほとんどしなくて輝きの良い透明度の高い素晴らしい素材ですが、コストも掛かり高価です!


その硬度をモース硬度とビッカース硬度で比較してみると、(モース硬度とは鉱物同士をこすりつけて、硬度の大小を決める方法で、ダイヤモンドを最大硬度の基準10として算出します。ビッカース硬度とはダイヤモンドの針を用いて、鉱物の表面を一定の力で押さえた時に出来るミゾの大きさから定められた硬度の事で、HV−Vickers Hardnessと略されます。)


ダイヤモンドを除けば、サファイアガラスがどれだけ硬度的に優秀かがわかりますね。
現在地球上では、サファイアよりも硬い鉱物はダイヤモンドしかないといわれています。
ちなみに、サファイヤのモース硬度9に対して、金属ナイフの刃は5.5程度ですので、いくらナイフでサファイヤガラスの風防を引っかいても
傷一つつけることは出来ません!!(試しにちょっと・・・ なんて絶対NGです危ないですので。。) 


性能的にはサファイアガラスが1番優秀ですが、他の2つも用途によっては素晴らしい素材ですし、
その時計の歴史や用途によって味のあるガラスを使うというのも時計の魅力の一つではないかと思います。


そんなことを考えながら自分の腕時計を眺めてみると、だんだんガラスが愛おしくなってきたりしませんか!?


By ナオキ