ちょいとまた進めてみる

 こっちもこっちで例によってフィクション(ry展開でs
 タノシス。
 あーでも、オリジナル設定とかも、見落としてたけどいろいろと楽しいものがありますね。土地の名前とか調べるのにほんとmabiwikiにめためたお世話になってるわけですけど、ゲーム内で出版されてる小話本の設定をジロジロながめてます。
 (`・ω・´)っ前の話はこちらです。



3.
 フィアードの森の際に、闇市がじわじわと広がり始める。日の光に代わって辺りを支配する月明かりが、新たな植物の芽吹きを促したかのようだ。
「準備おっけーって感じだね」
 月の魔力に目覚めたムーンゲートが、新たに二人の来訪者を照らし出した。レイナルド魔音の二人だった。
 まだ商品を並べきっていない店もあったが、多くは準備を終え、看板代わりの鬼火を灯して来客を待ち受けている。
 ゲートから数歩進むと、レイナルドはふと違和感を感じて立ち止まった。
「あー。やっぱりここって変だよね?」
 そんなレイナルド魔音が小声でささやきかける。
「フィアードマジック。目を閉じると、最初から森以外は何もなかったみたいに人や物の気配が消えるんだ。不思議ねぇ〜」
 魔音に言われるがままに、レイナルドが目を閉じ、市場を前にたたずむと、闇市の気配は消えた。
 レイナルドはその感覚に覚えがあった。
 かつて自らの存在を、かき消さんばかりの歓声の中に置いたことがあったのだ。
 そんなときは一度、包み込む声と自分とを分けるように目を閉じたものだった。五感を塞ぎ、自分さえも存在しない闇の中で魂だけの存在になれるような気がしたものだった。
 けれど今は、その境地まで達することはない。忘れていた息をゆっくり吐き出すと、レイナルドは目を開けた。
「おかえりせんせっ。んじゃいこうぜっ」
 言うや魔音は、水草の間を自由に泳ぎ回る魚のように、露店の隙間を縫って進んでいった。
 レイナルドがついて来られているかを確認するように、時折ちらちらと振り返る。
 そして、何度目か振り返ったとき、ついたよとにっこり笑った。
「これだけある店の中から、よくみつけたものだね」レイナルドの感心が口から漏れ出た。
「給料分は働かないとね──」えっへんと胸を張る魔音
「──ってあはは。まー、ネタを明かせば、オレの分身……ペットの嗅覚をちょっと借りたってだけの話なのさっ」
 屈んだ魔音がひょいと身軽な生き物を抱き上げた。灰色の猫だった。猫は、チーズの欠片を主人から与えられ、役目を終えたとばかりににゃあと一声鳴いて姿を消した。
 レイナルドは、その小さな後ろ姿を見送ると、店主にダンカンの書き付けを手渡した。


 村長の手紙を受け取った男は、眼帯に覆われていない右目をギョロロと動かして字面を追った。追っていくうちに渋面を形作り始め、空いた手で禿げ上がった頭の頂ををぽりぽりと掻いた。
 そして、ばつが悪そうに猛獣のような低い唸り声を絞り出した。
「旦那の話は聞いてまさぁ。けどよ、そいつはうまくいかなかったんで……」
 声色のわりに迫力のない口調で、約束の剣を渡すことができなくなったと告げた。
 魔音は、反射的に眉をつり上げ、口を開きかける。だが、凶相の男の哀れっぽい姿に口元をゆるめ、何があったのさと短く尋ねた。
イメンマハのセン湖でさ。ゲート前で臨検に会っちまって、出所の言えねぇ品の入った箱と一緒に橋の上から捨てちまったんで……」
 しょんぼりと伝える。
「この通りでさ……ダンカンの旦那にもくれぐれも申し訳ねぇとお伝えくだせぇ」
「ああ。気にしないでくれ。村長だってわかっているさ」
 レイナルドはさばさばとした口調で言い、
「主殿も災難だったな」慰めの言葉を返す。
「ほんとにすまねぇ。あっしにできることがあればなんでもさせてもらいまさぁ」
「また大袈裟だな」
「旦那、あっしはダンカンさんには大恩があるんで。。。」
「そうか。なら、そのうちまた世話になるさ」
 レイナルドは、店主の落胆ぶりが自分よりずっと大きなことにおかしみを感じながら、彼の肩に手をやり、別れを告げた。



「フィアードくんだりまで引っ張り回してしまってなんだかわるかったな」
 魔音は、けれどその言葉には答えず、しばらく黙って何かを考えている様子だった。そして、やおら口を開く。
「ねーせんせ、店主さんってば積み荷は湖に落としたって言ってたよね?」
「あぁ。確かそうだったな。でもそれがどうした?」
「ふふん。それならまだ目はあるかも」
 魔音は何かを思いついたらしく、にわかに目を輝かせて先の露店へと引き返した。

「ねーねーねー、店主さん、なんでもって言ったのほんとにほんと?」開口一番、魔音は店主に念を押す。
「無論で」と神妙に即応じる。
「それならね、……」耳打ちし、ごにょごにょと伝えて「ど?」と問う。
「やってみせやしょう。小せぇ旦那、恩にきりやす」言うや男は使用人の一人に店を任せ、
「失礼しまさぁ」市場の中に入っていった。



「……それで魔音、いったい何を手に入れたんだ?」
 魔音はニっと得意げに笑うと、レイナルドに一枚の古ぼけたコインを投げてよこした。
「珍しいデザインでしょ? たまたま在庫があって良かったよ」
 喜色満面の体で露店の店主が持ち帰ったのは、見慣れない一枚のコインだっ
た。
「強いて言えば、私が売っているアルビのアリーナコインに見えなくもないな
」手に取ったレイナルドは、重みを確かめるように握ったり、指ではじいたり
する。
「さすがはせんせ。良い線行ってるぜっ」
 魔音は口笛を吹き、二人乗りに耐え得る大柄な馬をどこからともなく呼び寄
せるや飛び乗った。
「私にはまだ話が見えてこないんだが……」
 レイナルドはコインを返しつつ、馬上の魔音を見上げて困惑気味につぶやく

 対して、ぶひひと応じる魔音の顔は、ますます得意げに上気した。
イメンマハのセン湖からは、いくつかの流れが出てってるんだけど、そのひ
とつはルンダ・ダンジョンに流れ込んでいるんだ」
「ルンダ?」
「そ。それが不幸中の幸いっ。あの店主さんが荷を落っことした辺りには、ま
さにそのルンダへと続く水流があるんだよね」
「それで、セン湖に落ちた例のグラディウスが、ルンダに流れ込んでくると?

「オウイエス
グラディウス救出作戦』と題したPT看板を掲げ、魔音レイナルドに手を差
し出した。
「正気か魔音?」
「イエスエス
「……。やれやれ。まかせたよ」差し出された魔音の手をとる。
「いえっさー」
 かくして二人は騎上の人となった。


 つづく(ノ*゚ー゚)ノ