室井先生の疫学批判6・10万人に何十人

ただ、肺ガンによる死亡率とはせいぜい人口一〇万人あたり数十人程度です。ということは、一〇〇人あたりに換算するとわずか数百分の何人という計算になります。その範囲内での非喫煙者と喫煙者の肺ガン発生率の違いとはさらにほんのわずかなものであり、(中略)腺ガンを取り除いて考えるなら、「リスク」もまたそこからさらに差し引いて考えることができます。
(「タバコ狩り」p75)

100人あたりに換算する意味がわかりません。《その範囲》のなかであろうと、喫煙が原因であるとされる割合は同じです(90%なら90%)

腺ガンを取り除いて考えるのはダメです。
全人口の年間の割合ですから、全喫煙者のうち一生でどれだけの割合の人が肺ガンで亡くなるかは、この統計からはわかりません。全喫煙者のうち十万人に何十人という肺ガンの死亡者が毎年でて、全非喫煙者のうち十万人に何人という肺ガンの死亡者が毎年でる、ということなら言えると思います。
タバコ狩りのこの箇所とほぼ同じ内容の記述が室井さんの過去の文、「嫌煙運動」という神経症(「嘘まみれの嫌煙キャンペーンを大学人はどう考えるのか」(改訂版)でありまして、その当時に山形浩生さんによる詳細な批判がなされています

直後にこう繋げています。

ですから、集団を管理する側から見たら大きな違いかもしれませんが、個人の立場から考えてみるときわめて小さなリスクであるとも言えるのです。
(同)

《ですから》で繋げているのがよくわかりませんが、
《集団を管理する側から見たら大きな違いかもしれませんが》は山形さんの批判を受けたものかもしれません。
個人のリスクとしては小さいとのことですが、肺ガンだけがタバコによるリスクではないのは、室井先生も後述している《タバコによる死亡者は国内だけでも年間六万五〇〇〇人とか一〇万人とかいわれており》(p75)という数字が肺ガンだけの数字ではないことでも明らかです。
《しかし、国内の死者の総数は一〇〇万人以上》(p76)とあります。全死亡の約一割弱がタバコによる死亡者になります。これを個人のリスクとしては小さいと見るのは苦しいです。