正木典膳という中高年の法学者がいる。彼の法理論は世界的な名声を得ていて、都内の国立大学で法学部長を務めている。学内や学界だけでなく、折からの警職法改正問題で国会から参考人として招致されたりもしている。そのような栄達をした人物が突然スキャンダルにさらされた。すなわち、彼の妻は長年のがんを患った後に死去したのち、家政婦を雇っていた。恩師の配慮によりその娘と結婚することになったのだが、内縁状態だった家政婦から不法行為による損害賠償請求裁判を提起された。正木は名誉棄損裁判を起こして対抗する。また警職法改正に反対する学生運動は激しく、自治会から教授会や学部長への突き上げもある。構内で自治会役員等に囲まれ…