十章は、一ヶ月の入院生活です。日本も滝山病院とかいろいろありますが、別にこの小説は中国の精神医療を糾弾する意図があるわけでもないので、その辺はありません。むかし、北京の銭湯を描いた映画「こころの湯」を見た時ですかね、中国の精神医療もいろいろありそうと思いました。 この小説について言うと、この章は北京五輪の期間ですので、一切北京五輪が描かれないな、と、ずいぶん後になってから、気づきます。主人公はその時入院中で、その後の生活でも、北京五輪とあまり関わらなかった。井上尚弥を破ったウズベキスタンの選手が中国のわりと年くった選手に敗れたこととか、内村航平のライバルの武漢の選手が好きなテレビ番組《奥特曼》…