1969年作品 日本映画/東宝/92分/
ブラック・コメディ映画。
[#3字下げ]第六 おれが来たんだ[#「第六 おれが来たんだ」は中見出し] ドミートリイは街道を飛ばして行った。モークロエまでは二十露里と少しあったが、アンドレイのトロイカは、一時間と十五分くらいで間に合いそうな勢いで疾駆するのであった。飛ぶようなトロイカの進行は、急にミーチャの頭をすがすがしくした。空気は爽やかに冷たく、澄んだ空には大きな星が輝いていた。それは、アリョーシャが大地に身をひれ伏して、『永久にこの土を愛する』と、夢中になって誓ったのと同じ晩であった。おそらく同じ時かもしれぬ。しかし、ミーチャの心はぼうっとしていた、恐ろしくぼうっとしていた。さまざまなものが、いま彼の心をさいなんで…