二十三 「堤邸に行くんですね」 僕が草履を履こうとしたら、きくが後ろからききょうを抱っこしながら、そう言った。 僕はぴくんとした。その通りだったからだ。 「待っててくださいね」 きくも草履を持ってきて、足袋を履き、「わたしも一緒に行きます」と言った。 ききょうはおんぶ紐のようなものに包んで、きくが抱えていた。 「ききょうも連れて行くのか」 「はい、置いていけないですもの」 「誰かに見てもらえばいいじゃないか」 「ききょうだって、弟に会いたいですよね」ときくは、ききょうに向かって言った。 堤邸は城を北側に見た場合に、屋敷町の西側にあった。東側の家老家の屋敷から少し距離はあるが、同じ武家屋敷の通り…