『荻窪メリーゴーランド』木下龍也・鈴木晴香(太田出版2023)より抜粋 * * * * * * * * * * * * * * * 君を撮るためのカメラがあたたまる太腿のうえ 海まで遠い (ひらくたび) ふたりふざけて切り合った髪の先端から火の匂い 私だけ結末を知っている本のどこまで話してしまえばいいの 一年の夜空すべてを見届けて〈永遠〉で終わらせるしりとり 終わろうとしている夜を引き止めるための涙がこの世に落ちた こぼれたら転がる果物が好きで真冬しずかにうつ伏せになる 消えないで赤く灯っているままの皆既月食、ちがう、両目だ 恋愛は羽で数えよ井の頭公園に百羽のスワンたち 上巻と下巻のあいだにも…