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イスラム債

(社会)
いすらむさい

スクーク。シャリア(イスラム法)では金利の受払、不確実な取引が禁じられているため、実物資産の取引を組み合わせ、事業収益の配当が得られる特定資産の持分証券としてシャリア適格性を確保した債券。シャリアの要請によって複雑な外見となっているが、経済的な機能は一般の通常債券取引と変わらない。ただし法的な扱いは国ごとに異なり、注意を要する。
なお、「スクーク」は証書を意味するアラビア語の複数形で、英語のチェックcheque(check)の語源となった。

発行形態

たとえば、スクークの発行体となる特別目的会社SPCを設立し、SPCがスクークで資金を調達、その資金で本来の資金調達を必要としている事業者から資産を買い取り、リースバックする。事業者が支払うリース料が、スクークの配当として投資家に支払われる。期間満了時には事業者がSPCから資産を買い取り、SPCはその売却代金でスクークを償還する。こうした仕組みはイジャーラ・スクークと呼ばれる。また、事業者と投資家が事業の共同出資者となる仕組みはムシャラカ・スクークと呼ばれる。事業者が直接スクークを発行する形態、スクーク発行のためのSPCを設立する形態など、さまざまなタイプがある。いずれの場合でも、スクークの投資家は社債の投資家同様、予め確定した額の配当を受け取り、配当額以上の事業収益は事業者が業績に応じたインセンティブ・フィーとして受け取る。

信用

SPCを介していても、いわゆる証券化商品とは異なり、信用判断は事業者の信用力に大きく依存する。裏付け資産があるためにリスクは有担保債券相当と考えられていたが、実際に2009年に起きたスクークのデフォルトでは、裏付け資産の所有権は投資家に移転されなかった。スクークのデフォルト事例は少なく、また中東諸国の破産法も適用事例が少ないため、経営破綻時に何が起きるかの予測は困難である。

コンプライアンス

具体的な取引のシャリア適格性判断は、シャリア学者によってなされる。シャリア解釈に柔軟なマレーシアではシャリア適格とされても中東諸国では不適格とされるなど、地域間のみならず学者の間でも判断に差が出ることがある。金融取引の安定性からは大きな問題であるが、シャリア解釈は信仰の問題でもあるため、解釈の統一は困難である。
非イスラム教国では、世俗法との食い違いが問題となる。日本では、銀行法で銀行の非金融業務を禁じているため、イスラム金融は実施できない。アメリカでは、特定のイスラム金融方式を、個別に銀行業務として認めている。イギリスでは金融サービス市場法によってイスラム金融も一般の通常金融取引と同じ基準で扱われている。また、税法上の取扱でも、一般の通常金融取引と同等の扱いとなるように、イギリス、シンガポールなどでは税制改正など制度面での整備を進めている。イスラム教国であるマレーシアでは、イスラム銀行法が制定されているが、イスラム金融に関わる紛争解決はシャリア裁判所の管轄外であり、実務上は通常一般の金融事件と区別されずに連邦裁判所で審理される。

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