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イングリッシュセター

動植物

イングリッシュセター

いんぐりっしゅせたー

イングリッシュ・セター(セッター

アイリッシュセッターアイルランド原産)、イングリッシュ・セッターイングランド原産)、ゴードン・セッタースコットランド原産)は、いずれも鳥猟犬(ガン・ドッグ)として選択淘汰された犬種で、その気質には共通するものがあります。ここではせたー(セッター)と総称します。

セッターポインターなどのガン・ドッグは、総じて我が国ではあまり人気がありません。

猟犬だから気が荒いのではないか、攻撃的なのではないか、人に馴れにくいのではないか------などといった負のイメージが流布していますが、完全な誤解です。セッターはどの犬種にも増して優しく、容易に人になつくばかりでなく、他の犬とも仲良くやっていけます。

神経質なところは微塵もなく、おおらかで、寛容です。

攻撃性という言葉ほど、この犬種から遠いものはありません。

セッターは、猟に銃が使われる以前は、獲物を追いつめ、見つけると獲物のすぐそばでセット(伏せたままじっと止まっている)して、捕獲網を手にしたハンターが来るのを待つのが仕事でした。その後、銃猟が主流になると、獲物の近くに立って目標の位置を指し示すようになりました。

セッター等の英国原産の猟犬は、その成り立ちからいっても、協調性や服従心に富んでいないほうが不思議です。

狩りはもともと、貴族階級が馬を駆り、大勢の猟犬を協同させておこなうものでしたから、他の犬と折り合いが悪いようでは困ります。また、飼い主の指示に従わない犬は、役に立ちません。銃の音に驚いたり、興奮して我を忘れる犬も失格です。協調性と服従性にすぐれ、気質の安定した扱いやすい犬だけが、猟犬として使われるのです。

成犬のセッターは気持ちの安定した、非常におだやかな犬種です。

真偽のほどは定かではありませんが、英国ではイングリッシュ・セッターに子守を務めさせるという話まであります。小さな子にもやさしく、子供のイタズラに対しても驚くほど辛抱強くそれを受け容れることができます。まったく申し分のない家庭犬といえるでしょう。

セッターにお決まりのポーズというのは、ゴロンと転がって、飼い主にお腹を見せる仕草です。これほど人なつこい犬はありません。

ただし---------ここからが問題ですが、一歩家の外に出ると、何代にもわたって選択され淘汰されて培われた猟犬としての本能にスイッチが入ります。猫や鳥、小動物に強く反応し、猟欲の強さは、ときとして彼らの服従心を忘れさせるほどのものがあります。

「獲物」と彼らが考える生き物の前では、全神経を集中してセット(静止)することがあります。「獲物」が逃げれば、追いかけたい衝動に圧倒されます。

セッターはその驚異的な持久力で、いざ猟となれば、1日100キロから場合によっては200キロ以上の距離を森や草原、湿地、荒れ野をぬって、獲物を追い求めながら走る犬種です。

その細身の身体には、猟のための圧倒的なエネルギーが蓄えられています。

肥満したゴールデンやラブは見かけても、肥満したセッターを見かけることはめったにありません。

これはセッターがいかに活動的な犬種であるかを物語っています。彼らは体内のエネルギーを燃焼し切るまで、骨惜しみなく動き続けるのです。

セッターは、存分な運動が必要な犬種です。

セッターのすべてが、強い猟欲を持っているわけではありません。

ショードッグとして繁殖されたセッターは、より大型で被毛も長く、見るからに立派な体躯を持っていますが、猟欲はあまり強くありません。

それに対して、狩猟用に繁殖されたより小型のセッターは、俊敏で、より強い猟欲を持つ傾向があります。

アイリッシュセッターは本来、きわめて優秀な狩猟犬ですが、家庭犬として改良が進んでいるためか、我が国で見かけるアイリッシュには、比較的猟欲のないものが多いようです。

イングリッシュ・セッターの多くもアイリッシュ同様、家庭犬としての性質が勝っていますが、ハンターが放棄したものは、やはり猟欲が強いと考えたほうがいいでしょう。

一方、ショードッグ系以外のゴードン・セッターは、欧米のハンターのサイトで激賞されるほど優秀な猟犬です。つまり、猟欲はずば抜けてます。

セッターは飼い主にとって、小型室内犬とはほとんどすべての面で対照的な注意点を持った犬種と考えてください。

呑気でやさしく、穏やかで神経質なところは皆無、他の犬とも争わず、無条件の信頼を人間に与えます。その点で、飼い主が気をつかうところはほとんどありません。

飼い主に求められるのは相応の体力です。

セッターにとって最大の労役である猟に出さない以上、十分な運動させるか、または骨の折れる作業をさせてあげる必要があります。

散歩以外に、エネルギーのはけ口が必要となってくるかもしれません。

ボール遊び、アジリティ訓練……。

セッターの飼い主が、攻撃性を心配したり、家族になつかないと嘆いたりするような光景は、ほとんどありえないでしょう。

若いセッターの飼い主が気にかけなくてはならないのは、一にも二にも、この犬の膨大な運動エネルギーをいかに発散させてやるか。そこに尽きます。運動エネルギーが十分に発散されないと、落ち着きのない、扱いにくい犬として振る舞う可能性があります。

※イングリッシュ・セッターの飼い主さんから、「マテなどのコマンドを入れてボール遊びをすると、15分間ほどの運動で十分のようだ」とのご指摘をいただきました。

ヨーロッパのゴードン・セッターのサイトにも、同種の記述があります。

そこでは、「肉体的運動をいくらおこなっても、むしろ運動能力と運動意欲が亢進してしまう可能性がある。運動欲を発散させるためには、メンタルなトレーニングをまじえるのが有効だ」といったことが書かれています。要は、身体ばかりでなく、「頭」も使わせるということでしょうか。

工夫しだいで、運動に割く時間を短くできる可能性はあります。

また、当然のことながら、個体差もかなりあり、幸運にも(?)運動をそれほど欲しないセッターに出会うチャンスも小さくありません。

加齢とともに、運動欲求は抑えられ、セッターのおだやかさ、優しさが際立ちます。

また、猟欲のとくに強いセッターの場合、散歩の引きがきわめて強いことがあります。

これはアルファシンドローム(ナンバーワン症候群)のせいではなく、むしろ彼らが飼い主に先行して獲物を追いかけた習性からきていると考えられます。

服従訓練で一生懸命に脚側歩行を仕込んでも、ネコや小動物を見つけた瞬間、すべてを忘れることがあるかもしれません。

性格は一般に、アイリッシュが陽性でやや落ち着きを欠いたお調子者、イングリッシュは穏やかで落ち着きがあります。

セッター全般に晩熟の傾向があります。平たくいえば、いつまでも子どもっぽさが抜けません。アイリッシュとゴードンはとくにそうです。

ラブラドールが2歳を境に見違えるように落ち着くとはよく聞かれる話ですが、セッターの場合は、それよりさらに(相当の)時間を要するようです。

しかし、いったん落ち着きを得たセッターは、素晴らしい家庭犬となります。

ラブラドールやゴールデンと比べても、訓練性という点では見劣りするかもしれませんが、心根の優しさ、穏やかさ、寛容さという点では、むしろ秀れているといっていいでしょう。

小学校中学年以上の子供たちの最良の遊び仲間であり、誰よりも寛容な友になりうる犬種です。

セッターは、心ないハンターが放棄したケースが少なくありません。

その場合、猟欲はかなり強いと考えるべきでしょう。

しかし、それ以外の大半は、セッターエネルギーを持てあました飼い主が放棄した家庭犬だと思われます。とくにアイリッシュのほとんどは、家庭犬として飼われていたものだと考えられます。猟欲はそれほど強くないはずです。

セッター里親になる場合、攻撃性などの性格的問題は、ほとんど心配する必要がありません。

よほどのことがないかぎり、セッターはその温良な性質を失いません。

また、かなり高齢であっても、この犬種には頑なさが感じられず、どこか子どもっぽいところが残っています。むしろ運動欲求が少なくなる分、年齢の行ったセッターのほうが飼いやすい面があります。

飼い犬に十分な時間を割ける、健康で活力のある若い家族に向いています。

通常、体重は25kg〜30kg程度。胸郭が大きく張り出し、腰は狭くくびれています。一見して、強靭な心肺と高い運動能力を有していることを感じさせます。イングリッシュの気品アイリッシュの外観の美しさには定評があります。