Karl Kraus (1874-1936)。世紀転換期ウィーンのユダヤ系諷刺家。非商業的な自主メディアである個人雑誌『ファッケル(Die Fackel, 1899-1936)』〔"Fackel"は「炬火」・「たいまつ」の意〕の執筆および「文芸劇場」と自称された一人芝居的な朗読会を通じて、言葉のパフォーマティヴな力を考察・実践。主な諷刺対象は新聞マスメディアであり、この点で『ファッケル』はブログの先駆とも見なされることがある。ベンヤミンやヴィトゲンシュタイン、アドルノをはじめとする広い範囲の思想家・表現者たちに影響を及ぼした。代表作は新聞記事の引用から成る反戦戯曲『人類最期の日々』、生前は封印されたナチズム諷刺『第三のワルプルギスの夜』、言語論の集成である『言葉』など(いずれも法政大学出版局から邦訳刊)。