「母探し」の物語である『海辺のカフカ』の終盤において、主人公の少年「田村カフカ」(=「僕」) の分身「カラスと呼ばれる少年」は、"父殺し、母と姉との姦通"という三つの予言を成就してもなお「恐怖も怒りも不安感」から逃れられない田村カフカに、「ほんとうにタフになる」ということを語る。 「僕はどうすればいいんだろう?」…… 「そうだな、君がやらなくちゃならないのは、たぶん君の中にある恐怖と怒りを乗り越えていくことだ」とカラスと呼ばれる少年は言う。「そこに明るい光を入れ、君の心の冷えた部分を溶かしていくことだ。それがほんとうにタフになるということなんだ。そうすることによってはじめて君は世界でいちばんタ…