ガートルード・スタイン

読書

ガートルード・スタイン

がーとるーどすたいん

Gertrude Stein(1874−1946)。アメリカユダヤ系女性詩人小説家モダニストとして、エズラ・パウンドやT.S.エリオットとともに重視すべき存在である。

両大戦後のパリにおいて、「ヨーロッパ」にあこがれるアメリカの若者たちの間で、スタインのもとを訪れることは「ガートールド詣で」と呼ばれた。しかし、当時の彼女の生活の都会的な洗練ぶりや、訪問者に対して発する奇妙な警句やイメージが先走り、文学史の中心で作品が熟読されることは、かえって少なくなってしまった。

スタインの名前は、現在ではむしろ、ヘミングウェイの本のエピグラムに掲げられた「あなたたちは、『失われた世代』ね」などという所で、人々の記憶の端に残っているが、フロイト心理学などを勉強したスタイン自身の作風の一例をあげるなら、りんご、バター、アスパラガス、鉛筆、など身近なものの名をあげると同時に、文字が隠しているイメージを同時に感じさせるような文体を完成させた。

単純な例になるが、たとえば、PEELED PENCIL, CHOKE と大文字で書き、Rub her coke、と続けたテクストがある。「剥き出しにされた鉛筆、のどにつまらせなさい。彼女のコークをこすりなさい」が直訳であり、表層の意味となるが、「鉛筆を剥き出しにする」は、上品に言って「ペニスの割礼」のイメージとつながり、もう少し具体的な解釈も、読み手の経験しだいでは可能である。つまり、読み手によって、さまざまな意味が顕れるように仕組んであるのだ。「彼女のコークをこすりなさい」という下りは、そのままでも「ピン」とくる内容だが、文学的にテクストを読解すれば、「CHOKE」の字面が、「アンティチョーク」を容易に想起させ、アンティチョークの中心には小さな芯があって、それは女性の(以下省略)。また「Rub her coke」を音読みすれば「ラブ・ハー・コーク」、もうすこしなめらかに読めば「ラバーコーク」、そう、それは「ラバー・コック(ゴムのペニス)」をも想像させるではないか。と、これまでのイメージを強引にまとめると、「剥き出しのペニスは喉に詰まる。あれを擦るには、おもちゃのゴムペニスが一番、生身の男は要らない」などというような解釈もできるのである。また、作家であるガートルードにとって、鉛筆は神聖なものであり…という所に端を発して、まったく正反対の別な解釈もできるという。確定された意味の層は、彼女のテクストに存在しない。

また、彼女はマルセル・デュシャンピカソ、ブラックなど新進画家の理解者であり、コレクターでもあった。写真はピカソによる、ガートルード・スタインその人の肖像である。