第二部は、19世紀の英領インドに舞台を移す。インドの出版関係の法規は自由を尊重するイギリス本国にならっているため、名目的には<検閲>という制度は存在せず、出版取締りは個々の出版物の摘発と裁判をとおして行われた。 冒頭で取り上げられるのはジェイムズ・ロング(1814年~87年)という宣教師のエピソード。1857年に起こったシパーヒーの反乱によって自分たちの支配に対し危機感を感じたイギリス人支配層は、インド人の意識を知るためロングに書籍の調査と報告を求めた。この調査を通じてイギリス人プランターに搾取されるライーヤト(耕作者)に同情したロングが、1861年にプランターの抑圧を描いたベンガル語のメロド…