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シンセミア

読書

シンセミア

しんせみあ

阿部和重氏の小説

http://www3.asahi.com/opendoors/span/sin_semillas/review.html

 舞台は阿部自身の故郷である山形県東根市神町。この町は終戦後アメリカ軍によって陵辱され、いまふたたび産廃処分場をめぐって人々が闘争を続けている。物語の主人公は神町という場所であり、その意味では中上健次紀州サーガや、ガルシア・マルケスの『百年の孤独』を連想させもする。しかし阿部の乾いた筆致と、関係性を形式的に操作しながら物語を編み上げていく手つきは、これまでの中短編が助走であったかのような独自の完成度に至っている。本作をもって作家・阿部和重の重要性はゆるぎないものとなるだろう。

 

斎藤環読書日記」より抜粋(「東京新聞」2003年8月3日朝刊)