フランソワ・トリフォーのデビュー作『大人はわかってくれない』が世に出るきっかけとなった映画とも言われているのが、ジャン・ヴィゴの『新学期操行ゼロ』(1933年)である。無政府主義の活動家の父を持つジャン・ヴィゴはドキュメンタリー2本と劇映画2本を遺してわずか29才の若さで亡くなっている。新学期に合わせて帰省先から寄宿舎に戻る一人の生徒が夜行列車の客席にいるシーンからこの映画は始まる。途中から合流してきた生徒と車内で手品を披露したり、次から次へと出てくる小道具で悪ふざけをしたりするのだが、しまいには葉巻をふかし車内を煙いっぱいにする。アナーキーな映画の始まりに唖然してしまうと同時に映画を見始める…