レイモンド・チャンドラーはストーリー・テリングに優れた作家とは思わないが、読者の情感にさざなみを寄せることには巧みで、その最たるものとして遺作『プレイバック』のあの人口に膾炙したやりとりがある。いまさら引用するのもはずかしくなるほどよく知られた会話だが英文法の仮定法過去の勉強にもなるので書きとめておこう。 "How can such a hard man be so gentle?" "If I was't hard, I wouldn't be alive, If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive." 「あなた…