今、私は1933年に刊行された同人誌『文學(5号)』を開いている。たまたま立ち寄った鎌倉の古本屋で購入してきた。『詩と詩論』の後継誌として春山行夫が取りまとめた同誌には春山以外に安西冬衛、北園克衛、竹中郁、西脇順三郎、瀧口修三などの面々が詩やエッセイ、評論、翻訳を寄せており、それらの生き生きとした調べに彼らが現代のこの瞬間を動き回っているような気がして、ふと目を上げる時もある。肉のように厚みのある、ほどけそうな紙面を漂う緊張感とは裏腹に、深々と印刷されている内容は日本に迫っている戦争の足音を微塵とも感じさせない、日欧米の柔らかな作品群や写真・絵である。(略) 彼らの文章を読んでいる内に、私が長…