Hatena Blog Tags

トーマス・トランストロンメル

(読書)
とーますとらんすとろんめる

Tomas Transtroemer
スウェーデンの国民的詩人。ノーベル文学賞受賞者。
人柄どおり、とても優しい作風で、絵画的であり音楽性も備わった短い自由詩のなかに、凝縮された簡潔な言葉で神秘的な世界をイメージ豊かに表現する。自然描写に優れ、独創的なメタファーを駆使し、「隠喩の巨匠」「神秘主義の巨匠」とも呼ばれる。
死や孤独など多種多様なテーマで詩を執筆し、隠喩や自然のイメージが巧みに織り込まれている点などが高く評価され、ノーベル文学賞受賞となる。ストックホルム大で心理学の学位を取得し、心理学者として青少年の更生施設で働いていたこともある。

 心理学者としての視点をはじめ、アメリカやアフリカなど世界各地を旅した経験や身近な人たちの病気や死などの体験、自由と言論統制といった相反するテーマを取り込み、現実とかけ離れた神秘的な独自の世界観を構築し、イメージ豊かに描いている。ゆっくりとした時の流れの中で内なる自分と外の世界が乖離していく、夢のような意識を提示する。想像と感情の世界に予測不能性を散りばめ、読む人の方向感覚を失わせると同時に新たな感覚を呼び覚ます。日常の風景や自然を簡潔な言葉づかいで表現。音楽性豊かな作品は、欧州の音楽家にも影響を与えている。代表作は「バルト海」、「悲しみのゴンドラ」。作品は世界の60カ国以上で翻訳され、イギリスをはじめアメリカ以外の英語圏ではよく知られており、国内外での受賞も多い。ヨシフ・ブロツキー(ノーベル文学賞を受賞したロシアの詩人)ら外国の詩人にも影響を与えた。本国で選集や伝記の刊行が相次いでいる。現在、脳卒中の後遺症でうまく話すことができないが、今なお創作活動を続けている。日本の文化に関心が高く、若い頃より俳句に興味を持ち『HAIKU』と名付けた短いスタイルの詩にも取り組んでいる。作曲家としても活躍する。アマチュアのピアニストでもある。毎日、麻痺のない左手でピアノを弾き、朝はクラシック音楽を聴いて過ごしている。

略歴

  • 1931年4月、ストックホルムに生まれる。
  • ストックホルム大学卒業
  • 心理学者として福祉施設などに勤務
  • 小さな雑誌に詩を投稿することで創作活動を開始
  • 1954年、処女詩集「17編の詩」
  • 1958年、詩集「路上の秘密」
  • 1962年、詩集「半ば出来上がりの天国」
  • 1974年、詩集「バルト海」(会話形式)
  • 1983年、散文詩集「荒れた広場」
  • 1990年、脳卒中で倒れ、半身不随と失語が後遺症に残る
  • 1993年、回想記「記憶がわたしを見る」
  • 1993年、ノーベル文学賞にノミネートされる。以後毎年ノミネートされ続ける。
  • 1996年、詩集「悲しみのゴンドラ」(俳句の詩型に挑戦)
  • 2011年、ノーベル文学賞受賞(詩人の受賞は1996年のヴィスワヴァ・シンボルスカ以来)

悲しみのゴンドラ

悲しみのゴンドラ

  • 作者: トーマストランストロンメル,Tomas Transtr¨omer,Eiko Duke,エイコデューク
  • 出版社/メーカー: 思潮社
  • 発売日: 1999/03
  • メディア: 単行本
  • クリック: 31回
  • この商品を含むブログ (2件) を見る
For the Living and the Dead

For the Living and the Dead

この他の邦訳では「群像」、「ユリイカ」、「現代詩手帖」(2005年9月号に「俳句抄」として作品を掲載)
 
ひそかな雨の音
わたしは秘密ひとつをささやいて
響き合わせる
(「俳句詩」より)
 

ノーベル文学賞アカデミー選考委員会による授賞理由

「明快で簡約化されたイメージを通して、新鮮な形で現実を描き出した」
「凝縮された半透明なイメージを通して、現実への新しい道筋をつけた」
「凝縮された半透明なイメージを通して、現実に対する新たな道程を示してくれた」
「凝縮された透明感のある描写を通して、現実に対する新たな道程を示してくれた」
「凝縮された明快なイメージを通じて現実に鮮やかに接近することを可能にした」
「凝縮された明快な概念は、現実に接近する新たな手法を示した」
「稠密で半透明のイメージは新鮮な形でわれわれを現実に向き合わせる」
「濃密かつ透明感のあるイメージを積み重ねることによって、私たちに現実への新たな道筋を示してくれた」

スウェーデン・アカデミーの会員で事務局長も務めるペーテル・エングルンドのコメント

「彼は、われわれを見据え、われわれを創造しながら、死と歴史と記憶に関して描写する。人間はこの3つの大きな要素が出会う一種の監獄のようなものなので、彼の詩を読んだ後は、自分が決して小さな存在ではなく、大きな存在であると思えるようになる」

「彼の作品はすべて、ポケットサイズほどの大きさだ。したがってとても速く読めるが中身はとても濃密だ。彼は多く作品を書くタイプの作家ではない」

朝日新聞に掲載された堀江敏幸による書評

「詩にとらえられた言の葉は、まるでその消えゆく緑のようだ。脳卒中で言葉を奪われたのち、詩人は前後に深い沈黙をたたえる新しい色を染めあげた。そしてなによりもすばらしい黒。「ゴンドラは命を重く積み運ぶ、簡素で黒いそのかたち。スウェーデンから届いた贈り物である」

このタグの解説についてこの解説文は、すでに終了したサービス「はてなキーワード」内で有志のユーザーが作成・編集した内容に基づいています。その正確性や網羅性をはてなが保証するものではありません。問題のある記述を発見した場合には、お問い合わせフォームよりご連絡ください。

関連ブログ