ニーベルング(ニーベルゲン)
ニーベルングとは「霧の国の人」を意味し、霧の国とは北欧神話で言うところのニブルヘイム、冥界を意味する。つまり、ニーベルング伝説とは英雄が冥界に潜って財宝又は花嫁を得て、愛(死)して神に転生する話と、その冥界の財宝を巡って人々が殺しあう話である。だから、全編に冥界下りのモチーフがこれでもか、これでもかというほどに何度も何度も重複して現われる。
また、「命の水」で紹介している民話群との関連も深い。ニーベルング伝説が民衆化され簡略化したものが「命の水」なのではないか。不死を得るための冥界下り、龍退治、眠る女王と一夜婚、嫉妬した兄弟分たちが英雄を暗殺すること、英雄の死後に彼の妻が軍を率いて兄弟分たちを殺し、復讐を成し遂げること……など、ずいぶん単純化してはいるが骨の部分は踏襲されている。
ニーベルング伝説は本来 『エッダ』の中に書かれているような北欧に伝わる断片的な伝承で、それをまとめて ひとつながりの物語にした13世紀頃の『ヴォルスンガ・サガ』、同じ頃に成立した、キリスト教化したドイツの抒情詩『ニーベルングの歌』、さらにそれらをアレンジした19世紀のワーグナーの歌劇『ニーベルングの指輪』などがある。その他、この伝説を元にした戯曲は複数存在する。