免疫不全のため、カプセルのなかで暮らす少年。それも、プラスチック製の無菌カプセルのなかで一生を過ごした少年。
映画「バブル・ボーイ」や、ドラマ「隣のサインフェルド」のエピソードとして、題材にとりあげられた。
バブルボーイと呼ばれた少年
カプセルのなかで暮らす少年。それも、プラスチック製の無菌カプセルのなかで一生を過ごした少年がいます。ADAという酵素がもともと体にないために重症複合型免疫不全症を引き起こし、免疫が完全に働かなくなった彼にとって、何より怖いのは感染症でした。T細胞(リンパ球のこと)のまったくない彼には、侵入してきた異物と戦う力はありません。
そこで、外界と完全に隔離するために用意されたのが無菌カプセル。それが透明な風船の様な形をしていたために、彼は「バブルボーイ」と呼ばれました。
彼が生きた1970年代は、この病気に最良とされる骨髄移植や、遺伝子治療がようやく始まったばかり。医療チームの努力は続けられましたが、12歳で短い生涯を閉じたのでした。
そして、ウイルスによって免疫不全の状態になる(※)のが、エイズ(後天性免疫不全症候群)。エイズウイルス(HIV)は、免疫の司令官ヘルパーT細胞を狙い撃ちし、そのなかでじわじわ増殖しながら、ついに殺してしまいます。司令官をなくし、何の指示も得られなくなったほかの免疫細胞たちは、途方にくれるばかり。
ちょっとしたカビやほかのウイルスの侵入を許し、さまざまな感染症を起こしてしまうのです。
(※)人工的にエイズの状態をつくりだせるのがステロイドの大量投与。
松下 祥『免疫力がアップする50の法則』P141 学研
http://narajin.net/archives/000629.html