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ファランクス

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一般

ファランクス

ふぁらんくす

[phalanx]

古代ギリシア世界において用いられた重装歩兵による密集方陣

解説

火器が登場するまでの歩兵の主武器は(刀剣ではなく)槍であった。振り回すことを考えなければ、長い槍の方が有利なのは言うまでもない。盾は身を守るために有効だったが、一人で自分の体を完全に守れるわけではない。この二つを併せた結果出現したのが、ファランクスだった。

「大きな盾を左手で持つ→左隣の兵士の右半身をその盾で守れる→左隣の兵士も大きな盾を左手で持つ」

これを繰り返すことで、ゆるやかに左下がりになる、長大な盾(と槍)の列ができることになる。次に、この列の後方にも同じ装備を持った兵士が並ぶ。何列か並ぶことで、強力な打撃力と防御力を持った方陣が完成することになる。

背景

ファランクス軍事システムとしていくつかの長所を備えているのは事実である。しかし、それが成立したのは、他のほとんどの場合と同様に背景となる社会を考慮せねばならない。古代ギリシアにおいては、当初は貴族層の騎馬の重装歩兵(移動時だけ馬に乗り、戦闘時は歩兵として戦う。昔は割と普通の戦い方)が主力だったが、市民層の力の上昇や、武器の改良などによって、武装を自弁する徒歩の重層歩兵が数的優位を占めるようになった。古代ギリシア民主制の担い手が彼らだったのは偶然ではない。共同体(ポリス)を守るために戦うものの発言力が大きくなるのは当然である。逆に、政治的な権利を持つのであれば、戦うという義務を果たす必要があるのも当然である。

市民の重装歩兵が主力になったので、ファランクスという陣形を取る必然性が生まれる。この意味で、ファランクス重装歩兵システムと民主制は、どちらか一方が原因で他方が結果であるというような単純な関係ではない。

また、この陣形はだれかが持ち場を離れると成り立たない(盾の列が途切れてしまう)ので、必然的に一定以上の戦意を持っている兵士で構成されている必然性もある。この点でも、「自国を守る」という意識を持てる市民軍である必然性が大きい。

弱点

さて、ファランクスは無敵のシステムではない。最大の弱点は機動性の低さである。

前進する場合には特に問題はない。マラトンの戦いで証明されたように、重装歩兵とは言っても、彼らはかなりの速度で走ることができた。しかし、陣形の性質上、横からの攻撃には弱い。相手が同じファランクス(ポリス同士の戦いであれば、普通はそうなるが)ならばいざ知らず、騎兵などの戦力を有している相手では分が悪い。

また陣形のメカニズム上、右翼に最強の部隊を配置することになる(最右翼には「自分の右半身を守ってくれる隣の兵士」は存在しないので)が、結果として同じ陣形のファランクス同士がぶつかっても、イマイチ面白い結果にはならない。

これに大きな改良を加えたのがテーバイ(テーベ市)のエパメイノンダス(エパミノンダス)で、彼は従来の常識を覆して左翼の兵力を厚くした斜形陣(斜線陣形)を導入して、当時最強のスパルタ軍を破ることに成功する。テーベで人質生活を送った経験を持つマケドニア王フィリッポス(アレクサンドロス大王の父)はこの新戦術を学び、さらに改良を加えてマケドニア軍を当代随一の軍事力に育て上げた。その礎の上に彼の息子が世界帝国を築くことになる。

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