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ブラックメタル

音楽

ブラックメタル

ぶらっくめたる

ブラックメタルとは '90 年代初頭、スカンジナビア半島デスメタルの一進化型として突然変異的に発生したジャンルの名称。

メタル内で細分化されたジャンルの1つではあるが、その音楽形態・思想形態はメタル―音楽さえの―の枠内には留まりきらない。

音楽史を紐解いてみても、ここまで過激でかつ狂気に彩られた音楽は、過去には存在しないと思われる。

メタルの世界には、古くから悪魔崇拝とは切っても切れない縁があるが、その理念を最も忠実に体現したのがブラックメタルであるといえる。音楽には、VENOM、BATHORY?、CELTIC FROST?といったサタニックメタルバンドの影響が色濃く出ているが、彼らが所謂サタニズムをあくまでモチーフの1つとして用いたのとは根本的に異なり、ブラックメタルバンドの多くはそれをイメージのみならず本気で実践したことで注目を浴びた。

ブラックメタルの始祖とされるのは、ノルウェーMAYHEMであり、このバンドのリーダーであるEuronymousがそのシーンの中心であった。彼はまた悪魔崇拝団体「インナー・サークル」の主宰者でもあり、最初期のブラックメタルシーンはこの団体の内部・周辺で形作られていった。

またブラックメタルの特徴の1つに、コープスペイント(通称、白塗り)と呼ばれる、顔を真っ白に塗る死化粧があるが、これを初めて行ったのがMAYHEMの2代目ヴォーカリストのDeadである。後に、Deadは猟銃で自らの頭を撃ち抜き、自殺してしまうが、その死体写真がMAYHEMのライヴCD(ブート)のジャケになったことも有名だ。

ブラックメタルシーンの存在が知られるようになったのは、そのシーンに属するBURZUM?というバンドのVarg Vikerness(彼は上述のMAYHEMのメンバーでもあった)がノルウェーの歴史ある教会に放火したときであろう。この事件をきっかけとし、ノルウェー国内のみならず、世界のメタルシーンをブラックメタルという言葉が席巻した。

放火事件が世間の好奇の目に晒されることにより、ブラックメタルシーンの中心人物であったEuronymousとVargの対立が深まった。そして、1993年夏にEuronymousが刺殺される事件が起こる。犯人はかつてから因縁のあったVargで、この事件をきっかけにインナー・サークルは崩壊、ブラックメタルシーンは瓦解する。

それと前後して、シーンに属する人間による事件が次々と発生した。EMPEROR?のドラマーFaustによるリレハンメルでの殺人事件、同じくEMPERORのギタリストSamothによる教会放火などが有名である。彼らサタニスト達は本国で「サタニック・テロリスト」と呼ばれて恐れられ、社会問題にまで発展した。

また、上にあげたノルウェー国内の事件以外にも、スウェーデンDISSECTIONのリーダー、Jon Nodtveidtの殺人幇助罪での逮捕〜自殺(彼の逮捕によりバンドは活動停止を余儀なくされたが、2003年に釈放、2004年には再始動。

しかし2006年には解散し、その後ジョンは自殺した)や、ドイツのABSURD?のメンバーによる殺人事件(このバンドがNSとの結合に決定的な契機を与えた)、ベルギーのENTHRONED?のメンバーの自殺などがあり、特に死と密接に関わる事象が常に付きまとっている。

これら一連の事件によりブラックメタルに悪い意味での注目が集まったこと、また主に活動していたメンバーらが娑婆からいなくなったことなどもあって、一時期ブラックメタルは終息を迎えたかに見えた。しかしそういったスキャンダラスな一面ばかりが取り沙汰される裏側で、音楽・思想にますますの磨きをかけていたDARKTHRONE?やIMMORTAL?といったバンド達も確かに存在し、現在でもブラックメタルシーンの活気は衰えてはいない。

それどころかCRADLE OF FILTHやDIMMU BORGIR?のように音楽性を高め、メジャー・シーンに躍り出るバンドまでおり、シーンは以前とはまた違った活況を呈していると言える。思想的にもサタニズムに留まらず、NS(国家社会主義)と結合するなど、新たな局面を迎えている。

音楽的には、MAYHEMが確立したデス声とは違った喚き声系ヴォーカル、ブラスト・ビートを主体とした無闇に高速なリズム、軽薄な音質、寒々しい雰囲気、といった一応の基本型はあるが、現在ではそれだけでは到底一括りにできないほど多様化が進んでいる。

ひたすらノイジーな劣悪音質や延々同じリフの繰り返しで構成される曲といったアンダーグラウンドさにあくまでこだわり、プリミティヴ・ブラックなどと称されるDARKTHRONEのようなバンドから、DISSECTIONなどのように叙情的なメロディを全編に導入したメロディック・ブラックと呼ばれるバンド、またBURZUMを筆頭とするノイズアンビエントを取り入れたバンドや、荘厳なキーボードや時にはオーケストラなどによるアレンジを施したCRADLE OF FILTHやDIMMU BORGIRをはじめとするシンフォニック・ブラックと呼ばれるバンドなどがある。

EMPERORあたりに至っては、楽曲構築方法に関してクラシックなどの影響も強い。さらには、そのEMPERORのメンバーであった(EMPERORは現在は解散している)SamothらによるZYKLON?やMYRKSKOG?のように、機械的で近未来的な雰囲気を打ち出したバンドなどなど、実に様々な音楽形態が存在する。