《海外移住を考える》 そのころ、読売新聞の宣伝部長だった稲垣さんが書いた本がよく売れていた。年金生活を海外で楽しもうというような内容だった。彼は、カナダのバンクーバーに住んでいて快適な日々のようだった。 カナダのリタイエメントビザは、移住後五年経てばカナダ国籍も得ることが出来るという。いろいろ調べてみると、われわれには最適ではないかと思うようになった。 私は「丘の上の家」に住んでいた六歳から十五歳までの九年間、毎日何時間も海を見つめて思っていたことがあった。 神戸港、大阪港に出入りする船を日々見つめていて、いつの日か海の向こうに住みたいと思っていた。 二十歳の時、コチア産業の募集に応じて合格し…