悠介はJR山手線の最寄り駅で降りて、大学キャンパスへ早足に急いでいた。 新宿駅で15分ほど足止めを食ったためだが、なんとか次の講義には間に合いそうだ。 ほんの少し前に起こった出来事を思い出そうとして、柄にもなく顔を赤らめてしまった。 救護室に彼女を運び込んで寝かせてから、ホッと大きな息を吐いて彼女をあらためて見てみた。実はどのような女性か顔も服装もはっきり見ていなかったのだ。 満員電車内で起こったことで、彼女の顔を見られなかったし、抱きかかえてからは(初体験だったこともあり)女性の体を何処かにぶつけないように細心の注意を払っていたせいか、そのような些細なこと(!)に思いが及ばなかったという事ら…