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宇宙をかき乱すべきか

サイエンス

宇宙をかき乱すべきか

うちゅうをかきみだすべきか

物理学者にして、未来学者であるフリーマン・ダイソンの自伝。

Freeman Dyson, Disturbing the Universe, Harper & Row, New York, 1979 の全訳書


優れた数学の才能から、第二次世界大戦にはイギリス空軍司令部に所属して爆撃の効果を統計的に解析していたダイソンは、終戦を迎えた後アメリカに渡り、オッペンハイマーやハンス・ベーテなど第一線の物理学者と交流するようになった。

その交流を通じ、まだ理解できるものがほとんどいなかったリチャード・ファインマン流の量子力学の数式化を行い、多くの物理学者に理解できるようにした。その数式化が、相対性理論量子力学を量子電気力学的に統合した数式「ダイソン方程式」を生み出すに至った。


量子力学を中心とする理論物理学の他にも、原子炉の設計、核軍縮問題など広範な分野に及ぶ活動を、憂いを帯びた深い思索を持って自伝にしたためている。また後半は、遠未来の宇宙文明に思いをはせた雄大な未来予想となっている。

核兵器という強大な破壊力を作り出すに至った物理学者数学者の一人として、科学者ギリシャ神話におけるダイダロスのように、科学技術を濫用するようになったという自省をこめて、科学者の持つべき倫理に対して警鐘を鳴らしている。


人類の活動をいかに遙かな未来まで存続させることができるかを考えぬいたダイソンは、遙かに進歩した文明は、その恒星が持つエネルギーをもっとも効率よく使用するには、恒星の周囲をすべて包み込むからを作るだろうという予想をしている。ダイソンスフィアと名付けられたこの人工天体は、以後SFにたびたび登場するようになる。ただし、このアイデアはSF作家オラフ・ステープルドンの『スターメイカー』から見つけたものだと述べている。