拙著1巻「京の印地打ち」に登場する「大黒印地衆」は「声聞師(しょもじ)」たちから成る印地集団である。声聞師とは「広義の非人」の中に分類された職能のひとつで、民間で芸能ごとを行っていた人々である。安倍晴明で有名な陰陽師の系譜を引く、という触れ込みで活動していたが、嘘であろう。 世界的に見ても凡そ全ての芸能は、「祝い」という宗教的な行事がその源流にある。声聞師たちの携わっていた芸能もそうである。そして中世は現在よりも遥かに、こうした祝福芸能を大変に重視した社会なのである。なので、その種類も大変に多かった。 声聞師の代表的な芸をあげると、まず「陰陽」は卜占や加持祈祷、「金鼓」は鉦を打ちながら経文を唱…