仮名草子

読書

仮名草子

かなぞうし

仮名草子 (かなぞうし)

【定義】

近世初期、慶長(1596〜1615)から天和(1681〜84)にかけての、約80年間に作られた、小説を中心とする散文文芸の総称。ただし、このように、散文文芸全般を含める広い範囲とする説と、他方で、物語・小説的な作品に限定すべきであるとする説もある。

この近世初期は、日本歴史の中でも代表的な啓蒙期であり、この時期に、漢字(振仮名付き)交じり仮名書きの通俗平易な読み物が次々と作られた。これら一群の文学的著作に与えられたのが「仮名草子」という名称で、命名は仮名草子研究を切り拓いた水谷不倒である。その数は、はじめは180点ほどであったが、研究が進むにつれて増加して、現在では300点にも達する。

作品の原本は、写本または版本(古活字本・整版本)として伝存するが、版本は出版の黎明期にふさわしく、全体に版式もおおらかで、大きな本が多い。

【分類】

仮名草子は、物語・詩歌・日記・随筆・評論・実録などのように、さまざまな文学ジャンルを包括している。そこで、これらを、どのように分類整理するかという問題が生じる。

野田寿雄氏の説に従って紹介すると以下の通りである。

1、 啓蒙教訓的なもの(教義問答的なもの、随筆的なもの、女性教訓的なもの、翻訳物)

2、 娯楽的なもの(中世風な物語、説話集的なもの、翻訳物、擬物語)

3、 実用本位のもの(見聞記的なもの、名所記的なもの、評判記的なもの)

この分類からもわかる通り、仮名草子は複合ジャンルのような性質をもっている。文学史的には、お伽草子仮名草子浮世草子と接続するが、これを小説の系列として考えるならば、小説以外の作品をどう扱うべきか、という問題が今後の課題として残されている。

【範囲】

 仮名草子の範囲を考える場合、留意すべき事項は、次の各項目が考えられる。

 1、御伽草子との関連。

 2、浮世草子との関連。

 3、評判記(遊女・役者)との関連。

 4、軍書、軍学書との関連。

 5、咄本との関連。

 6、随筆的著作との関連。

 7、名所記、地誌、紀行との関連。

 8、教訓書、女性教訓書との関連。

 9、仮名仏書、仮名儒書との関連。

 10、注釈書(・・・抄)との関連。

 11、翻訳物、翻案物との関連。

 これらの、各項を具体的に検討することも今後の課題である。

【参考文献】

坪内逍遥水谷不倒近世列伝体小説史』春陽堂明治30年。

◎水谷弓彦『仮名草子』水谷文庫、大正8年。

水谷不倒『新撰列伝体小説史 前編』、春陽堂、昭和7年。

◎ 北条秀雄『改訂増補 浅井了意』笠間書院、昭和47年。

◎ 田中伸『仮名草子の研究』桜楓社、昭和49年。

◎ 水田潤『仮名草子の世界―未分化の系譜―』桜楓社、昭和56年。

野間光辰近世作家伝攷』中央公論社、昭和60年。

◎ 渡辺守邦『仮名草子の基底』勉誠社、昭和61年。

◎ 野田寿雄『日本近世小説史 仮名草子篇』勉誠社、昭和61年。

◎ 三浦邦夫『仮名草子についての研究』おうふう、平成8年。

◎ 松原秀江『薄雪物語と御伽草子仮名草子和泉書院、平成9年。

◎ 市古夏生『近世初期文学と出版文化』若草書房、平成10年。

◎ 青山忠一『近世仏教文学の研究』おうふう、平成11年。

◎ 江本裕『近世前期小説の研究』若草書房、平成12年。

◎ 花田富二夫『仮名草子研究―説話とその周辺―』新典社、平成15年。

近世文学書誌研究会編『近世文学資料類従・仮名草子編・古板地誌編』 全61冊、勉誠社、昭和47〜56年。

東洋文庫日本古典文学会編『仮名草子』貴重本刊行会、昭和49年。

◎ 谷脇理史編『仮名草子集』早稲田大学資料影印叢書刊行委員会早稲田大学出版部、平成6年。

朝倉治彦等編・校訂 『仮名草子集成』 1巻〜49巻、東京堂出版、昭和55〜平成25年。全70巻で、刊行中。

◎野田寿雄校注『仮名草子集』上・下、日本古典全書、朝日新聞社、昭和35・37年。

◎ 前田金五郎・森田武校注『仮名草子集』日本古典文学大系90、岩波書店、昭和40年。

◎ 青山忠一・岸得蔵・神保五弥・谷脇理史校注・訳『仮名草子集 浮世草子集』日本古典文学全集37、小学館、昭和46年。

◎ 渡辺守邦・渡辺憲司校注『仮名草子集』新日本古典文学大系74、岩波書店、平成3年。

◎ 谷脇理史・岡雅彦・井上和人校注・訳『仮名草子集』新編日本古典文学全集64、小学館、平成11年。

◎ 深沢秋男・菊池真一編『仮名草子研究文献目録和泉書院、平成16年。

◎ 深沢秋男・菊池真一編『仮名草子研究叢書』全8巻クレス出版、平成18年。

仮名草子研究文献目録 → http://www.ksskbg.com/kana/index.html