🌸花影 written by Fukagawa🌸 花散里《はなちるさと》が心細がって、 今度のことが決まって以来始終手紙をよこすのも、 源氏にはもっともなことと思われて、 あの人ももう一度逢いに行ってやらねば 恨めしく思うであろうという気がして、 今夜もまたそこへ行くために家を出るのを、 源氏は自身ながらも物足らず寂しく思われて、 気が進まなかったために、ずっとふけてから来たのを、 「ここまでも別れにお歩きになる所の一つにして お寄りくださいましたとは」 こんなことを言って喜んだ女御のことなどは 少し省略して置く。 この心細い女兄弟は源氏の同情によって わずかに生活の体面を保っているのであるか…