一月二十五日の朝、京都も「雪化粧」するほどの雪が降った。蕪村に「宿かせと刀投出す雪吹哉(ふぶきかな)」という印象深い句があるが、芭蕉が詠んだ「雪」の句はどうであろう。「はつゆきや幸(さいはひ)庵にまかりある」待ちに待った初雪を己(おの)れの庵で見ることができた喜び。「初雪や水仙のはのたはむまで」「時雨をやもどかしがりて松の雪」もどかしい思いで見ていた時雨が漸(ようや)く雪となった思い。「しほれふすや世はさかさまの雪の竹」子に先立たれた知り合いに宛てて詠んだ句。「霰まじる帷子(かたびら)雪はこもんかな」ひらひら降ってくる雪が布地の小紋の模様のようだ。「今朝の雪根深を薗の枝折哉」葱が雪表の道案内。…