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核兵器

サイエンス

核兵器

かくへいき

nuclear weapon

核反応(原子核反応)を利用した兵器。核弾頭(核爆発装置)の意味で用いられることもあるが、通常は最終運搬手段を含めた、核ミサイル核爆弾などのことを指す。

通常兵器とは比較にならぬほどの大威力を持つことから、「大量破壊兵器」「NBC兵器」などと特別にカテゴライズされている。


破壊力

核兵器は核爆発による攻撃力を期待する兵器であり、その破壊力は大きく3つ、熱線・爆風・放射線からなる。

熱線

熱線とは、核反応によって生じる大量の熱エネルギーの輻射である。爆心近くにおいては強烈な温度上昇を引き起こしてあらゆる可燃物を燃焼させる力がある。広島長崎においては文字通りの火炎地獄が現出している。

また、火災が起きない程度に爆心から離れても、強烈な輻射は目視した人間を失明させ、むき出しの皮膚に重度の火傷を引き起こす力がある。

爆風

核爆発による物理的(力学的)な影響。二つの異なる現象をまとめて爆風と呼んでいる。

まず、核反応が高温の火の玉を形成し、これが猛烈に膨張することで衝撃波が発生する。弾頭威力、高度、気象条件などによって左右されるが、いずれにせよ爆心から形成された火の玉とともに発生し、つづいて火の玉の表面から離れて同心円状に広がっていく。空中爆発の場合、衝撃波が地上に達すると反射波を生み出して額面上の威力を倍加させる。

次に、さらに、爆心地直下においては火の玉の急激な上昇に伴って猛烈な上昇気流と気圧の低下が起き、結果周辺から大量の空気が爆心に向かって吹き戻されて暴風となる。

核実験などのフィルムに見られる、爆発直後に建築物などが一瞬爆心の反対方向に向かって押しつけられたようになってから、爆心方向に引っ張られたようになって倒壊する現象は、この爆風によるものである。

いわゆる硬化目標(地下施設)を対象に核兵器を使用する場合、地表(もしくは地中)で核弾頭を爆発させて、衝撃波を伝播させて破壊する。

放射線

核爆発による、核物理学的な影響。大雑把に、核爆発直後に出る初期放射線と、核反応によって生成された各種の放射性物質によって発生する残留放射線の二つに分けられる。

まず、核反応で発生したエネルギーの一部が中性子ガンマ線などの形で放射される。いずれも強い貫通性を持ち、人体などを通り抜ける過程で(途中を省略すると)細胞中の遺伝子を傷つけ、破壊する。遺伝子が機能を失えば細胞が破壊されることになる(大量に被爆すれば死に至る)し、傷ついた遺伝子は癌の原因にもなる。

さて、核分裂とは、重い元素が分裂して、二つ以上のより軽い元素に化ける現象である*1。こうして生成された軽い元素の中には、各種の放射性同位元素が含まれており、それらが残留放射線を生み出す。つまりは放射性降下物(死の灰)の中身である。代表的なものとしてはストロンチウム90、セシウム137、ヨウ素131などがある。


放射能兵器

核兵器は核爆発による大威力を期待する兵器である。これとは別に放射能(残留放射線)による長期間の荒廃を目的とする兵器を特に放射能兵器と呼ぶ。いわゆる「汚い爆弾(ダーティーボム)」などはこれに当たる。

なお、上記の定義に従えば、劣化ウラン弾が巷間言われているような健康被害の原因だったとしても、放射能兵器にはあたらない。


分類

目的、原理などによっていくつかに分けられる。

原理による分類

核分裂兵器
いわゆる原爆(原子爆弾)のこと。ウランプルトニウム等の重い元素核分裂反応を利用する。原理上、サイズに上限があるため、一定以上の威力の物は製造できない
核融合兵器
いわゆる水爆(水素爆弾)のこと。中性子爆弾も原理上はこちらに含まれる。水素等の軽い元素核融合反応を利用する*2。理論上、いくらでも威力を上昇させることができるため、核分裂兵器よりも大威力のものが造られている。

目的による分類

戦術核兵器
単に「戦術核」とも。名前の通り、戦術目的で使用される核兵器核爆弾の他、短射程核ミサイル、核砲弾、核地雷、核魚雷、核爆雷などが含まれる。極言すれば「見える範囲」にいる敵を攻撃するために用いられる核兵器の総称である*3
戦略核兵器
単に「戦略核」とも。敵国の戦略目標を破壊するための兵器。全面核戦争の主役。ICBMSLBM戦略爆撃機からなり、これらを併せて戦略核三本柱と呼ぶ。
戦域核
「中距離核戦力(INF)」などとも。かつてIRBMと呼ばれたミサイル群や地上発射巡航ミサイルなどが含まれる。戦術核よりは長い射程を持つが、あくまでも戦略目標でなく敵戦力を攻撃するための核兵器のこと。ただし、欧州正面のような場所では大抵の国の首都が互いの戦域核の射程に収められてしまっていた。

概説

本来、上記のような分類に、あまり大した意味はない。日本人なら誰でも知っているように、原爆でも都市に使えばあれだけの破壊をもたらしたのだし、逆に水爆で戦術目標を攻撃してもよい*4

射程の大小にしても、配備場所と目標との距離が近ければあまり問題ではなく、つまりはNATO戦術核・戦域核(と称する物)が自国の戦略目標を破壊するために用いられるのではないかとソヴィエトが疑ったのも、無理からぬところである*5

*1:本当は化けた元素がさらに化けたりとかいろいろあってややこしいが省略する。

*2:もっとも、核融合に必要な高温・高圧状態を作り出すために核分裂装置を使用しているが

*3潜水艦[から/を]見ることはできないが、まあそれはそれとして。

*4:「もったいない」し、威力が余って味方や都市を巻き込むおそれがあるから普通はそんなことはしないが。

*5欧州正面の地上配備兵力で劣勢にあったNATOにしても、わざわざ「こういう時にこういう目標に対してこういう核兵器を使用します」と公開していたわけではない。どういう反撃が来るかを予想させ、それに対する恐怖心から攻撃を抑制させる、というのが核抑止の本質である。が、どういう反撃が来るかを完全に理解されてしまった場合、対策を立てられて抑止効果が下がるという矛盾が根底にある。

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