戦前の日本で教養を身につけることができたのは、旧制高校生だけだった。最も有名なのは外国語の授業で、甲類は英語、乙類はドイツ語、丙類はフランス語が第一外国語で週に10時間以上をこの言語での購読に充てられた。この授業で旧制高校生は英独仏語による文学作品やエッセイを直接読み込んだ。記録によれば英語ではエマーソン、ホーソーン、エリオットを、ドイツ語ではゲーテやシラー、レッシングを、フランス語ではデカルト、ラシーヌ、ボードレールを読んだという。読んだと言っても教授による訳読を聞いていたに近いこともあったようだが、九鬼修造の述懐のように、こうした外国語教育で沢山の本に触れて視野が広がったという感想を持った…