大城立裕さんというのは偉大な作家だったんだなあ。歴史的事実を丹念に積み重ねながら、人物像や情景が目に浮かぶような見事な筆さばき。 本作は沖縄・石垣島に初めて気象測候所をつくり、島の開発につくした岩崎卓爾の生涯を描いた伝記ものの小説だ。 岩崎卓爾は名前は知っていたし、どこかでその事績も読んでいるはずなんだが、ぜんぜん印象に残っていなかった。明治時代の地方(田舎)にいけば、そこかしこに「初めての~」が作られていただろうし、それに貢献した優秀な官吏も多かったに違いない。というわけで、具体的なイメージをまったく伴わないで見聞きしていたので印象がなかったんだと思う。 ところがこの作品を通して、岩崎卓爾を…