ジャコメッティ存命中に発表されたすべての文章を収めた書物。 ジャコメッティ愛好家必読の書物ではあるが、芸術家本人が書いたテクストだからといって絵画や彫刻と同じレベルの表現とはとらえないほうが無難。あくまで芸術家本人が綴ったところの参考資料と思っておいたほうがよい。ただし、巻末の7篇の対談は、創作活動の日常を脚色することなく語っているという点で、ジャコメッティの独自性がより顕著に表れているので興味深い。異なる対談相手に対して同じようなことを語っている点でも信頼がおける。※矢内原以外の対談者に対してはモデルの眼差しをとらえることが最重要であると言っているのに対し、本書を含め矢内原がモデルの時は鼻の…