大河内正敏所長の型破りな采配のもと,鈴木梅太郎,仁科芳雄,湯川秀樹,朝永振一郎,寺田寅彦,武見太郎ら傑出した才能が集い,「科学者の自由な楽園」と呼ばれた理化学研究所.科学史上燦然たる成果を残した理研の草創から敗戦まで,その栄光と苦難の道のりを描き上げる傑作ノンフィクション――. 理化学によって立国たらんとした国策において,純粋理化学の研究所として始まった研究機関が眩しく輝いた時代があった.仁科芳雄研究室に所属した朝永振一郎は,理研を「科学者の自由な楽園であった」と回顧している.それは,仁科がニールス・ボーア(Niels Henrik David Bohr)の下で学んだコペンハーゲン学派の精神に…