牛海綿状脳症

サイエンス

牛海綿状脳症

ぎゅうかいめんじょうのうしょう

牛海綿状脳症(BSE)は伝達性海綿状脳症(TSE:Transmissible Spongiform Encephalopathies)という未だ十分に解明されていない伝達因子(病気を伝えるもの)と関係する病気のひとつである。

牛の脳の組織にスポンジ状の変化を起こし、起立不能等の症状を示す遅発性かつ悪性の中枢神経系の疾病である。発症した場合、必ず致死的。

 

病原体

未解明の伝達因子の第一候補としては、プリオンが挙げられる。プリオンは、プリオン蛋白質という通常の細胞蛋白質(PrPC)が異常化した異常型プリオン蛋白質(PrPSc)から構成される。

このプリオンは、細菌やウイルスに有効な薬剤であっても効果がなく、通常の加熱調理等では不活化しない。不活化させるには、国際獣疫事務局(OIE)の基準では組織の大きさを5cm以下に細分したものを133℃以上、3気圧で20分以上の高圧滅菌が必要であるとされている。

なおBSEプリオンは、間接的証拠しかないが、人の変異型ヤコブ病(vCJD)の原因と考えられている。

 

病因 

1986年にイギリスBSE感染した牛が確認された。これは、スクレイピー(羊の海綿状脳症)に感染した羊を利用した肉骨粉(食肉処理の過程で得られる肉、皮、骨等の残磋から製造される飼料原料)を含む飼料が原因と考えられ、BSEスクレイピー起源説とされている。

Wilesmthらは、肉骨粉の製造法がパッチ法という充分に加熱を行うものから連続法という熱処理が短いものへと変更され、それにより充分に不活化されなかったスクレイピー病原体が餌に混入し、スクレイピーが増加し、それがBSE発生の原因となったと推測した。

しかし、2000年に英国政府BSE調査委員会はこの説を否定しており、未だBSE病原体の期限は不明である。

(肉骨粉を介したリサイクリングBSEを広げたという点に関しては見解が一致している)

 

疫学

BSEは1986年11月に英国中央獣医学研究所で最初に報告された。その後感染は急速に広まり、2006年1月現在184296頭が摘発されている(http://niah.naro.affrc.go.jp/disease/bse/count.html)。

英国政府は1988年7月にウシ、ヒツジなど反芻動物への肉骨粉の使用を禁止したが、その後1992年の37280頭(英国のウシ全頭の0.97%)をピークに発生は減り始め、昨年は121頭となっており、肉骨粉使用禁止が効果的だったことを示す半面、撲滅されないことから他の飼料(代用乳、配合飼料)の関与も考えられている。

各国の発生状況は上記Webサイト参照。

日本では21頭が確認されている。

 

症状

野外で感染した場合、2〜8年(平均5年)の潜伏期の後、音に対する異常反応、不安動作、音などへの過敏反応、起立時の後肢開脚、ふらつき歩行を経て、攻撃的興奮状態、転倒、起立不能と症状が進行する。

 

予防・治療

現在有効な治療法はない。

予防法としては、飼料管理を徹底し、汚染地域から飼料、家畜ともに導入しないことである。

  

 

イギリスBSE感染した牛が「Mad Cow Disease」と表現されて、日本では「狂牛病」と訳されて以来、「狂牛病」の名称が用いられてきた。しかし、病気の実態について誤解を与えるおそれがあり、日本も含めて世界各国の政府機関、WHOなど国際機関は「BSE」の名称を用いている。