特急列車を降りて人の波に乗って改札を出ると、開放的なデッキの向こうに青空が見えた。背の低い建物が並ぶ、広い空に覆われた街。今日は風が強い。大きく開いた出口から少し冷たい風が吹きつける。髪が顔にあたる。払いのけながらつばの広い帽子を押さえる。駅舎を出ると立ち込める光が瞳に突き刺さる。天気は良すぎるくらいだ。大通りに向かう。青いスーツケースを引きながらしばらく歩くとローカル線の駅に着いた。数駅ほどで降りる。ホームから地上へ上がると、川辺の樹木からウグイスの声が聞こえる。気持ちの良い風が吹く。昨日の雨で増量し濁った川面を辿り視線を挙げると、山の稜線がほのかに光っている。細い道に入り周囲の建物を確かめ…