1885年11月22日-1957年4月25日。山口県萩市出身。京都帝国大学卒業後、東京音楽学校ピアノ科に入学。ドイツに留学、音響学を研究。またピアニスト無用論などの評論活動で知られた。音楽学者、批評家。
1935年に『中央公論』に掲載した「音楽界の迷信」の
バデレウスキー*1が叩いても、猫が上を歩いても、同じ鍵盤からは同じ音しか出ない。どの指で、どんな形で、どんな打ち方で叩こうと、そんな事は音楽の音とは別に何の関係もない。
という一節が、「ピアニスト無用論」として物議を醸した。そのため、現在でも「音楽に理解がない、エキセントリックな人物」という評価が定着している。しかし実際には作曲家よりも演奏家を持て囃し、コルトーらの恣意的な演奏を「芸」としてありがたがる当時の音楽界を批判するのが、彼の目的であった。たとえば
ベートーヴェンのゾナーテは文学上の形容詞でなく、純粋にピアノの音楽の形式の上で再現されなければならぬ。
久野女史をいたむ
といった文章に、彼の音楽観は表れている。
著書
- 『日本の音楽』六合館 1913.心理学論集
- 『音楽巡礼』岩波書店 1925
- 『音楽の話と唱歌集』興文社 小学生全集 1927
- 『ベートーヴェンの死』岩波書店 1927
- 『平民楽人シューベルト』岩波書店 1928 のち角川文庫
- 『音楽概論』岩波書店 学芸叢書 1929
- 『音楽に志す人へ』鉄塔書院 1929
- 『新楽典』富山房 1929
- 『母のための音楽』イデア書院 1929
- 『音楽の階級性 附・名人滅亡』鉄塔書院 1931
- 『音楽と生活』岩波書店 1935
- 『残響』岩波書店 1937
- 『日本の言葉と唄の構造』岩波書店 1938
- 『日本語の研究』中央公論社 1939
- 『ショパン』弘文堂 教養文庫 1940
- 『日本音楽と西洋音楽』三笠書房 現代叢書 1941
- 『よもやま話』厚生閣 1941
- 『石川啄木』三笠書房 現代叢書 1943
- 『結婚論』生活社 1943
- 『与謝野晶子』三笠書房 1948
- 『音楽の教室』十字屋書店 1949
- 『未完の独奏 人生論ノート』志摩書房 1950
- 『音楽の話』広島図書 銀の鈴文庫 1951
- 『美しき言葉の情熱 牧水・晶子・啄木』出版東京 1952
- 『音楽の芽ばえ 子供とピアノ』慶応通信 1955
- 『兼常清佐遺作集』兼常清佐遺作集刊行会 1960
- 『音楽と生活 兼常清佐随筆集』杉本秀太郎編 1992 岩波文庫
- 『兼常清佐著作集』蒲生美津子, 土田英三郎, 川上央編 大空社,
- 第1‐3巻 (日本の音楽) 2008.6
- 第4‐5巻(音楽批評)2008.6
- 第6‐7巻(音楽教育)2009.1
- 第8‐10巻(音・ことば・科学) (兼常清佐遺作集)2009
- 第11巻(随想) (音楽と生活) 2009.9
- 第12巻(随想) (残響) 2009.9
- 第13巻(随想) 2009.9
- 第14巻(随想) (新聞雑誌掲載稿) 2010
- 第15巻(書簡・日記) 2010.1
- 別巻 (兼常清佐ミクロコスモス) 2010
共編著
- 『日本音楽集成 第1編 雅楽 第1輯(催馬楽) 』辻荘一共編 南葵音楽図書館 1930
- 『イギリスの詩・日本の詩 日本の言葉・イギリスの言葉』宮内玉子共著 北星堂書店 1953