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犬が星見た

読書

犬が星見た

いぬがほしみた

正式タイトル 犬が星見た-ロシア旅行

武田百合子

中公文庫(1982.01.10/340P 16cm)

ISBN:4122008948

 死期を悟り最後の旅と予感している夫、武田泰淳とその友人竹内好とのロシア旅行に同行して書かれた旅行記。朴とつな口調で、でもそこに優しさと楽しさが染み出している文章でロシアという国を飲み込んでいる。

 仕事部屋の掃除をしながら、ものめずらしげに本を覗いている私を、武田はおかしがったものである。

「やい、ポチ。わかるか。神妙な顔だなあ」と。

 もしかしたら星などは見えはしないのかもしれないが、そうとしか思えない格好をしている犬を見かける。(中略)……ビクターの犬そっくりに坐って、頭をかしげ、ふしぎそうに星空を見上げて動かない。

 まことに、犬が星見た旅であった。楽しかった。糸が切れて漂うごとく遊び戯れながら旅をした。(あとがき)