本探索1407の山室静と耕進社の関係については『近代出版史探索Ⅱ』208、214で言及し、山室を通じて耕進社から矢野文夫訳『悪の華』が出版の運びとなったこと、及び山室たちのリトルマガジン『明治文学研究』が刊行されたことを既述しておいた。その際に、耕進社が須合慶治という小さな印刷所を兼ねた人物によって営まれていたことにもふれたけれど、耕進社の書籍は入手しておらず、この版元の出版物の全容は把握されていなかったし、その後もずっと古本屋で出合うこともなかった。 ところが最近になって所用で静岡に出かけ、あべの古書店にも立ち寄ったところ、耕進社の書籍を見出したのである。それはD・H・ロレンスの『翼のある蛇…