下駄買うて箪笥の上や年の暮 永井荷風。年のつまった花街祇園の日中も夜さえもその大方が海外からの旅行者でひっきりなしであるが。「祇園精舎の鐘のこゑ、諸行無常のひびきあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰のことわりをあらはす。」(『平家物語』巻第一)この祇園精舎を改めてひもとけば、『岩波仏教辞典』(岩波書店1989年刊)にこうある。「古代インドのコーサラ国の都シラーヴァスティーにあった精舎の名。シラーヴァスティーの須達長者が私財を投じて祇陀太子の園林を買い取って、釈尊とその教団のために建てた僧房の名である。祇陀太子の苑林であるから<祇樹><祇園>などと漢訳された。須達長者は貧しい孤独な人々に食を給したの…