「寢所に入つて段々夜が更けて來ると、私は、今に芝居から戻つて私の宿の座敷に來て待つてゐる筈の妓が氣にかかり出し、それを思ふと、一入そつちへ歸つてみたくなつた。それで機會を見てそつと自分の部屋を出て友達の部屋の外の廊下に立つと、微醉氣嫌で好い心持ちになつてゐる友達は、何かひそ/\合方の太夫と物語ながら半分吊りかけた蚊帳の外に偃臥つてゐるところである。」 著者は友人に事情を話し、角屋に泊まることなく宿に帰ることになったわけですが、通常であれば友人のように、遊客として「合方の太夫」と共に朝まで「寢所」の「寢床」で過ごすわけです そして翌朝、歴史ある揚屋の中を見て回るという観光も遊興の一部となっていた…