伏見の清楚な町屋で、佐々木英昭作『襖の向こうに──漱石二人芝居』試演を観た。佐々木氏の脚本、二口大学、広田ゆうみ両氏の演技とも、期待にたがわぬ充実したものだった。 漱石の『こころ』と『道草』、さらに鏡子夫人の『漱石の思い出』をもとに組み上げられた漱石解読の可視化ともいうべき試みで、作者佐々木氏の執拗な問いかけが、熱のこもった演技を通して伝わってきた。 『こころ』の先生と『道草』の健三を合体させ、また前者のお嬢さんと後者の妻・お住に漱石夫人までを繋げた男女二人による対話劇には、オールビーの『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』を思い出させるほどの勢いがあった。 その上で、漱石世界に恐るべき真剣…