たまに、一度読んで以来、忘れられなくなる話がある。 例えば、小学生の時友達の家などで読んだマンガ。萩尾望都さんの「11人いる!」とか佐々木淳子さんの「リディアの住む時に…」のように。強烈にそのストーリィが頭に残って消えない。そうして、そんな話とは後年、決まって再会できる。 そんな話の一つが「五色の舟」、津原泰水さんの短編小説である。作者の津原泰水さんは、2022年に若くして亡くなっている。 この話を最初に読んだのがいつだったかは思い出せない。初出が2010年ということなので、今から10年くらい前だろうか。短編集「11(eleven)」の最初にこの短編はひっそり載っていた。先日、この本を図書館で…