商於 商於(しょうお)の地とは中島敦「山月記」の舞台となる地名であり、これもまた現在の河南省にある。 李徴の友人、監察御史である陳郡の袁惨がここに宿った。袁惨は勅命を奉じて嶺南に使いする途上であったが早朝人食い虎が出るので出発を遅らせようという駅吏の言葉を振り切って出立し変わり果てた旧友に遭うのである。 嶺南とは今でいう華南の地であり唐の時代であればまだまだ瘴癘が猛威をふるう未開の地ではなかったか。関中の長安から南の地に行くわけであるから最短のルートは函谷関を過ぎて黄河沿いに行くのではなしに、長安を出て藍田から武関を経て南陽に抜け南下する路である。函谷関が関中の表玄関なら、武関はバックドアだ。…